2022 Fiscal Year Annual Research Report
Social affect and mechanisms of musical practice: an ethnographic study of Cuban art music
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18K00144
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| Research Institution | The University of Tokyo |
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Principal Investigator |
田中 理恵子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 学術研究員 (50779105)
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| Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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| Keywords | キューバ芸術音楽 / 生と芸術の人類学 / 音楽と日常の実践 / 共有 / 情動 / 制御不能 / ダイアロジカル・アプローチ / 時間とかたち |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、音楽実践を契機に人びとの心性がいかに形成され、あるいは変容するのか、音楽実践がもたらす集団的な情動（アフェクトゥス）形成の機序を明らかにすることにある。具体的には、音楽実践が特異なイデオロギーを形成した例として「キューバ芸術音楽」と「キューバ性」との相関に注目し、人類学的調査に基づいた音楽研究を展開した。
本年度は、昨年までに得られたキューバ実験音楽の実践に関するデータを基に、分析と考察を深めていった。その際、オンラインを中心に行われる作品発表の分析、およびオンラインでのインタビュー調査のデータを新たに収集し、それらを比較参照点として検討を進めていった。
注目されたのは、オンライン配信の際に音楽家たちが好んで用いる、ミュージック・ビデオの視覚的表現である。一例として、作曲家B氏のミュージック・ビデオでは、一見すると作品とは無関係な映像（遠くに映されるさまざまな色合いの空や海、または小さく映される石、葉脈、虫など）が好んで用いられていた。だが、これらの映像は、ダイアロジカル・アプローチとしての試み（音楽家たち自身に日常の音や風景を記録してもらう）で得られた映像にも共通した点が多く見られた。インタビューを重ねたところ、それらの光景は、「キューバ」や「ハバナ」を彷彿とさせるものであったり、さらには漠然と何らかの「共感」を換気したりするものであるという。検討を重ねた結果、作曲家や聴衆たちは先のミュージック・ビデオを通して、音楽の映像化を経験するというよりも、むしろ音楽や映像の向こうに、人びとにキューバ性として「共有」している光景や経験を「みる」のではないかと考えられた。
以上のことから、人びとは社会変化のなかで、一定の時空に収められた音楽や映像、「共有」されたキューバ性を契機として、音の流れゆく「向こう」を経験するという、集団的な情動形成の一端が浮き彫りになった。
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