2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K00156
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Research Institution | Kokugakuin University Hokkaido Junior College |
Principal Investigator |
山寺 三知 國學院大學北海道短期大学部, その他部局等, 教授 (70352507)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 日本音楽 / 中国音楽 / 東洋音楽 / 正倉院 / 古楽譜 / 雅楽 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の著名な東洋音楽学者、林謙三(はやし けんぞう、1899-1976)は、日本に伝存する演奏法・古楽譜・古楽器等を手掛かりとして、東アジア古代音楽における楽理の解明、楽譜の解読、楽曲・楽器の復元等を実証的に行ったことで知られる。本研究は、林謙三の東アジア楽器学関連の資料を調査し、未発表の学術成果を発掘・整理・翻刻し、公刊を目指すとともに、それらの作業を通じ、林謙三による東アジア楽器学研究の意義を再検証・再評価し、さらには、音楽学はもとより東アジア文化研究に寄与せんとするものである。 2018年度は以下の①から⑤の作業を行った。 ①2018年9月・2019年3月に、林謙三旧邸において調査を行い、既刊の著作二種『東アジア楽器考』(1973年)と『東亜楽器考』(1962年、中国語版)の前身である『東亜楽器考』(未刊。日本語による)の草稿のうちの未発表原稿、及び昭和23年度から同25年度にかけて行われた人文科学研究費の報告書「東亜に於ける楽器に関する研究」「同(二)」「同(三)」(いずれも未公開)をはじめ、その他の草稿・資料等について撮影を行った。/②2019年3月に、関西大学において、同大学に移管中である林謙三旧蔵資料を調査した。以上①・②での調査により、既発表ながら、「林謙三先生年譜・業績目録」「同 補遺」やCiNii・雑誌記事索引等の学術情報データベースに掲載されていないために、一般に認知されていない業績がいくつかあることが判明した。/③撮影した草稿の一部について翻字に着手した。/④「日本楽器学試論(続)―日本楽器史観―」(即ち、上記報告書「東亜に於ける楽器に関する研究(三)」)の翻刻を公表した。/⑤林謙三の未発表原稿「唐代に歌われた詩辞について」の翻刻を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた計画のうち、資料の撮影等はおおむね順調に行うことができているが、以下の点については、当初の計画に比して停滞している。/①林謙三旧邸における調査の過程において、未分類の資料を整理する必要が生じ、時間を要している。/②草稿の翻字では、原典やそのほかの文献による校訂作業に、予想以上に時間を要している。特に、林氏が原稿執筆の際に用いた文献は、古典籍・古文書・漢籍・英仏独による文献等、多岐にわたり、その上、稀少なものも含まれるため、確認作業に時間を要している。また、草稿には、挿図や楽譜が多数用いられているが、それらの状態が思わしくないため、画像の処理、図表の作成作業等に時間を要している。/③当初、東京藝術大学図書館において貴重書の調査を行う予定であったが、現在、新館移転にともない、貴重書を閲覧することができない状態にあるとのことであるため、2019年度以降に延期することとした。 以上のとおり、具体的作業においては停滞している面もあるが、一方で調査の過程で新たに資料を発見する等の成果が見られ、新たな作業を計画に加えることとした。したがって、総合的には、おおむね順調といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度以降も引き続き、関西大学において調査を行う計画であるため、筆者がかつて参加していた2015-17年度科研・基盤(B)「隋唐燕楽歌辞の文学的・音楽学的アプローチによる双方向的研究」の研究代表者であった、関西大学の長谷部剛氏に「研究協力者」として協力を仰ぐこととする。 2019年度以降も引き続き、調査・撮影・翻字作業を行うが、資料の調査・整理については、林謙三の琴学や楽理研究についても詳しく、また、筆者がかつて参加した科研「隋唐燕楽歌辞の文学的・音楽学的アプローチによる双方向的研究」での成果である『林謙三『隋唐燕楽調研究』とその周辺』(長谷部氏との共著、2017年、関西大学出版部)の編集・出版にあたって様々な意見を受けた、山寺美紀子氏に「研究協力者」として協力を仰ぐこととする。なお、長谷部剛、山寺美紀子両氏には、2018年度の調査にすでに立ち会っていただいている。 また、2018度の調査によって明らかになったことを踏まえ、当初の計画には無かったが、新たに「林謙三業績目録訂補(仮題)」の作成に着手することとする。
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Causes of Carryover |
理由:作業手順の変更等により、当初、2018年度に計上していた、以下の予算を2019年度に繰り越すこととした。①資料の整理、翻刻等に用いる情報処理機器(特にコンピューター)及びソフトウエアの購入、②林謙三旧蔵オープンリールテープに録音された音源のデジタル化(業者委託)等。 2019年度の使用計画:①情報処理機器及びソフトウエアの購入、②オープンリールテープ音源のデジタル化(業者委託)、③調査出張の旅費、④関連書籍の購入、⑤資料の複写等。
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