2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K00157
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Research Institution | Seitoku University Junior College |
Principal Investigator |
正道寺 康子 聖徳大学短期大学部, 総合文化学科, 教授 (70320702)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森野 正弘 山口大学, 人文学部, 教授 (60346541)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 教訓抄 / 楽書 / 古代日本音楽 / 雅楽 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画通り、『教訓抄』巻1~巻8の書き下し文に取り組んだ。 まず、2019年8月28日~30日に、山口大学において、「『教訓抄』書き下し文」に係る研究会を設け、研究代表者・研究分担者(森野正弘)・研究協力者(上原作和・笹生美貴子)が集まり、書き下し文について検討した。特に、表記の統一についてすり合わせをした。以後、申し合わせ事項に従って、各自、担当分の書き下し文に取り組んだ。書き下し文は、2020年3月末までにほぼ完成している。 2019年11月3日~4日には奈良・彦根に出張し、奈良では春日大社で南都楽所による雅楽の上演(振鉾・賀殿・長保楽・還城楽等)の見学、奈良国立博物館の正倉院展では七絃琴等の伝来楽器を見学し資料収集を行った。彦根城博物館では、雅楽関連の楽器(笙・竜笛・箏の琴・琵琶)を見学、資料を収集した。また学芸員(竹内光久氏)と面会し、デジタルコピーの入手方法や所蔵楽器の閲覧方法等に係る手続きの仕方を教わり、その後、『教訓抄』巻4(井伊家伝来典籍V042)の複写を入手した。 研究分担者の森野は、「『源氏物語』の内大臣家における音楽の相承―トーテム化する和琴―」(『山口大学文学会志』第70巻、2020年3月)を執筆した。 上記以外では、全国大学国語国文学会・第119回大会シンポジウム「日本を紡ぐ歌謡―次世代への提言として」(2019年6月29日、於二松学舎大学)や公開シンポジウム「興福寺に鳴り響いた音楽 教訓抄の世界」(2019年8月17日、於興福寺会館)に参加して、『教訓抄』およびその周辺に関する研究の現在を確認した。さらに、「伶倫楽遊―青海波を聴く、観る」(伶楽舎、於四谷区民ホール、2019年5月27日)等、雅楽コンサートを年に複数回鑑賞し、『教訓抄』への理解を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度よりスタートした共同研究だが、2018年度は『教訓抄』本文の校訂やシンポジウムでの研究発表、2019年度は『教訓抄』の書き下し文に取り組んだ。書き下し文をどのようにするのか、全巻の統一がなかなかできず、何度も検討や修正を迫られた。研究者だけでなく、一般にも広く理解してもらえるように、書き下し文も「分かりやすいこと」を第一に考えた。 ほぼ計画通りであるが、研究発表や研究論文の数が少ないので、これまでの蓄積をもとに、今後、代表者・分担者・協力者が各自、研究成果を公表してゆきたいと考えている。 また、見通しとしては、残り2年(2020年度・2021年度)で『教訓抄』の語釈・現代語訳に目途をつけ、最終年度である2022年度には、『教訓抄』の書き下し文・語釈・現代語訳を公開する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、『教訓抄』の語釈・現代語訳作業に取りかかる。各自、担当分の巻で、1巻分の語釈・現代語訳を完成させたい。現代語訳をしてゆくことによって、書き下し文や校訂本文を随時修正し、『教訓抄』の校訂本文・書き下し文・語釈・現代語訳の体裁を整えてゆく予定である。 従って、2020年度も研究会を複数回、開催したい。2020年度の前半は新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、打ち合わせはオンライン会議を考えている。ただし、オンラインでは、細かい確認作業に莫大な時間がかかるので、実際に会って検討する必要もある。2020年8月から2021年3月までの間で、一堂に会する研究会を2回程度、設けたい。また、前述の研究会以外に、雅楽関連の調査(雅楽器・装束・古典籍等)、雅楽の実演を見学する予定である。そのため、奈良への出張を予定している。 2020年度末までに学会での研究発表または研究論文の執筆もしたい。
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Causes of Carryover |
2020年3月に研究会を開催することを模索したが、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため開催を見送ったので、研究分担者(森野)の上京分の旅費が未使用になった。 また、『教訓抄』の書き下し文の完成が3月下旬にずれ込んだため、共同研究者以外の第三者から助言を得たり、確認してもらったりする作業も見送ったので、予定していた謝金の分の研究費が未使用になった。 繰越金は、2020年度の研究会および調査のための旅費に組み入れたい。また、今後、語釈や現代語訳に取り組むことになるので、関連図書の購入や助言を得るための謝金に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)