2022 Fiscal Year Annual Research Report
Christian Art in the Medieval Iberian Peninsula and its collective memories: (re) evaluating the role of Muslim and Jewish Minorities
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18K00160
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
久米 順子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (60570645)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 中世イベリア半島 / 異文化交渉 / 中世キリスト教美術 / スペイン美術 / ムデハル美術 / イスラーム美術 / ユダヤ美術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、①中世イベリア半島のキリスト教美術・建築のうち、キリスト教圏に居住したムスリムとユダヤ人が制作に関与した作品を分析し、宗教的文化的マイノリティ集団が西欧中世美術に果たした役割を再考する、②そうした宗教的文化的マイノリティ集団の関与が、19世紀以降今日までのスペイン社会においてどのような評価の変遷を遂げてきたのかをスペイン史・スペイン美術史をめぐる言説の分析から明らかにする、の2点である。 研究計画の遂行には現地での調査が不可欠であったが、新型コロナウイルス感染症の拡大により、スペインでの作品調査ばかりか、国内の図書館での文献調査も不可能となったため、研究計画の変更を余儀なくされた。具体的には、ムデハル工人による建築や壁画といった現地調査が不可欠な作例から、インターネットで最低限の図像収集が可能な写本に研究対象をシフトし、写本挿絵におけるマイノリティ表象を扱うこととした。インターネット注文や郵便での取り寄せを使って本研究課題に必要な文献をある程度集めることができたことは幸いであった。再延長が認められた2022年の夏に、ようやくスペインでの資料収集が可能となり、未見の文献資料を中心に補足的な調査を行うことができた。 研究成果としては、イベリア半島のキリスト教美術における異教徒討伐図像の成立と変遷を写本挿絵を通じて検討した論文のほか、当初の研究目的①②に関連する近年の複数の研究書の新刊紹介・書評、ムデハル美術、キリスト教写本挿絵、アラゴン連合王国史に関する欧文論文の翻訳などが得られた。当初の見込みとは方向性が異なり、特に当初の研究目的②に関して捗々しい成果を挙げられなかった点は忸怩たる思いだが、コロナ禍という予想外の状況の中で、中世イベリア半島のキリスト教美術と、宗教的文化的マイノリティ集団との関わりについての知見を広げることができた。
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Research Products
(4 results)