2018 Fiscal Year Research-status Report
マレー半島・インドネシア諸島における密教美術の総合的調査研究
Project/Area Number |
18K00161
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
伊藤 奈保子 広島大学, 文学研究科, 准教授 (20452625)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | マレー半島 / インドネシア / 密教美術 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、研究成果としてインドネシアの仏像について学会発表を2回行った。第47回豊山教学大会(平成30年7月6日)、第69回日本印度學佛教學会学術大会(平成30年9月2日)。 特に、後者の発表では、ジャワ島中部地域のチャンディ・プラオサンの2つの祠堂に安置される石造菩薩像、各6躯(計12躯)について、持物等から尊名の比定を行い、従来の説に異を唱えた。すなわち、密教の八大菩薩のうち、除蓋障、虚空蔵を除いた六尊(南室・中央室・北室から順に文殊、地蔵、金剛手か、観音、普賢、弥勒)の菩薩像であると論述した。この成果をもとに、2つの祠堂の北に位置する北テラスの21躯(如来像9躯、菩薩像11躯、財宝尊1躯)の尊像群について、尊名比定を試み、文殊、地蔵、金剛手か、観音(2躯)、弥勒であると考察した。 こうした八大菩薩のうち、二尊を除いた六尊形式をとるグループが、2つの祠堂のグループを含め、少なくとも3つは存在していた可能性があることを指摘し、北テラスのグループは、2つの祠堂の尊像群と坐法等が異なることにも触れた。 また、これらの形式は、西インドのエローラ石窟、および東インドのウダヤギリ等の影響をうけていることを"On the Groups of Buddhist Statues Outside the temples in Candiplaosan, Central Java",邦題「中部ジャワ、チャンディ・プラオサン、祠堂外の仏像群について」,Journal of Indian and Buddhist Studies, Vol.67, No.3, March 2019.に掲載した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
体調不良により計画上の調査を行うことはできなかったが、文献資料収集を徹底的におこない、資料の分類、分析をし、蓄積していた資料も加えて学会で発表を行った。今後はこれらの資料をもとに、海外調査を行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、アメリカのメトロポリタン美術館のクロノスコレクションのインドネシア鋳造像の調査を予定。優品が多く、詳細を確認することで、今までの鋳造像との比較検討を行う。また、チャンディ・ボロブドゥルのレリーフの分析を始める。8~9世紀と建立年代が確認できる寺院であり、そこに彫刻された如来、菩薩の図像表現を確認することで、インドネシア、およびマレー半島の尊像との関連性を考察する。
|
Causes of Carryover |
当該年度は体調不良から当初予定していた海外調査を行うことができなかった。平成31年度(令和元年度)には、体調を整え、海外調査を2回とそのための機材購入を行う予定である。今年度は、9月以降、アメリカのメトロポリタン美術館を調査予定。令和2年3月以降にシュリーヴィジャヤに関連する地域の調査を予定している。
|