2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K00165
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Research Institution | Gunma Prefectural Women's University |
Principal Investigator |
塩澤 寛樹 群馬県立女子大学, 文学部, 教授 (60162567)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 武家肖像彫刻 / 夫妻像 / 安本亀八 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、実地調査に向けた情報収集・調査交渉を継続するかたわら、できるだけ実地調査実施に重点に置いた。実地調査の実現に至ったのは、東京・養玉院小関庄次郎夫妻像、同天海僧正坐像、東京・永青文庫細川宏子坐像、愛知・実相寺聖一国師坐像、同無外爾然坐像、宮城・瑞巌寺伊達政宗倚像、三重・個人蔵角田半兵衛夫妻像、同角田冨教坐像、三重・個人蔵岡村甚六坐像、三重・個人蔵横山文圭坐像、三重・極楽寺泰山法印坐像、三重・西方寺小野三左衛門坐像である。 次に、実地調査を行った作例について、それぞれの主な成果を記す。東京・養玉院の小関庄次郎夫妻像は、近世前期における富裕町人層の夫妻肖像彫刻であり、夫妻像の展開を考える上で意義を持つ。同寺天海僧正坐像は、同時期の他の天海坐像との比較において意義があり、とりわけその形式展開を見る上で重要である。 宮城・瑞巌寺伊達政宗倚像は、日本の武家肖像彫刻が束帯像を中心とする中にあって、珍しい甲冑姿の本格的肖像彫刻で、今後、武家肖像彫刻の展開の中で位置付けが求められる作例と判断される。 東京・永青文庫細川宏子坐像、三重県内の個人蔵、極楽寺、西方寺の肖像彫刻は、いずれも幕末から明治にかけて生人形師として活躍した安本亀八の作品である。亀八の作品を彫刻史的観点から考察したり、肖像彫刻として位置づける作業はこれまでほとんどされていないので、これらの調査はその足がかりになると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、撮影・調書作成を行う本格的な実地調査を9箇所、調査体数は14体にのぼる。今年度は、夫妻像、武家甲冑像、安本亀八の肖像彫刻に重点を置いて調査を行った。本研究はこれまでに研究が欠落ないし等閑視されてきた時代や分野の作例に重点を置くことが主眼の一つなので、その観点からみて、いずれも意義のある作例で、これらの詳細基礎資料が作成できたことは大きな成果である。また、調査交渉は数カ所を行っている。これらに基づいて判断すれば、本年度の進捗状況はおおむね予定通りであったと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、2020年度においては実地調査を実施するかたわら、研究のとりまとめと方向書作成に重点をおくこととなる。実地調査では福井・龍泉院の徳川家康坐像、徳川秀忠坐像、結城秀光坐像や、奈良県、群馬県、神奈川県所在の安本亀八作の肖像彫刻、群馬・世良田東照宮東照権現像、愛知・国分寺伝熱田大宮司夫妻像などを考えている。 しかし、現状では新型コロナウイルスの影響で外出そのものがいつできるかも見通せず、現時点では調査実施の目処が立たない。社会状況の推移を見ながら適宜判断せざるを得ないが、年度後半になっても可能な限り実施したいと考えている。
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Causes of Carryover |
3月に計画した実地調査において、新型コロナウイルスの影響により、調査の体制を縮小し、調査対象を絞ったため。
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Research Products
(2 results)