2022 Fiscal Year Research-status Report
鎌倉ノートを一次資料とした染織語彙集の作成及び琉球・沖縄染織の総合的研究
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18K00167
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Research Institution | Okinawa Prefectural University of Arts |
Principal Investigator |
久貝 典子 沖縄県立芸術大学, 芸術文化研究所, 研究員 (30812979)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 近世琉球 / 染織物 / 染織物の技術 / 貢布 / 琉球産布 / 輸入織物 / 首里城 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、昨年度に続き全国的に新型コロナウィルスの影響下にあり、各調査地への移動制限の完全解除には至っていなかった。また、筆者も突発性難聴を発症し、執筆活動に重点を置いての研究が中心となった。他方、動画配信サービス(YouTube) を利用して研究結果の一部を公表した。昨年度の研究実績は以下の通りである。 1.調査活動 4月、久米島の太史氏関係者の依頼を受け、ハチマチ・織物・衣服資料など、の調査を行った(28点余)。5~6月、コロナ下の入館許可を経て、南風原文化センターで南風原花織等2回の染織資料を調査した(33点)。10月、豊見城市教育委員会の依頼を受け、沖永良部島関係の衣装調査(羽織1点)を行った。2023年2月、久米島ゆいまーる館にて現地調査を行った。 2.発表活動 6月、沖縄文化協会にて「暮らしの中で見出された染色文化」と題し、口頭発表を行った。10月、琉球大学附属図書館学外企画展と関連した動画「南風原の織物」(https://www.youtube.com/watch?v=xAqAkDVnGSg)、平良次子氏・仲間伸恵氏と行った「織物トークセッション」前編・後編(https://www.youtube.com/watch?v=fJsumhEublg、https://www.youtube.com/watch?v=ShfliRTUvdE&t=3s)が公開された。 3.執筆活動 現在『年刊 藝能』掲載の「『校注 琉球戯曲集』に記された三つ葉布をめぐって ―宮古蔵・村芝居の踊り衣装との関連からー」を校正中である(6月以降刊行予定)。単著の執筆については、コロナ禍の影響で検証作業ができていない箇所、昨年度の調査整理の遅れがあり、全体としては4章建ての第4章「琉球の衣服文化」(仮題)に手直しを行っている最中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年の春~初冬にかけて突発性難聴を発症したため、その年は予調通りの調査研究・執筆活動ができなかった。現在は、病状はほぼ回復しているが、同年の不安定な健康状態が影響し、2022年度に予定していた単著の刊行を延長せざるを得なくなった。本事業は2023年度に刊行する計画に変更した。 「研究実績の概要」でも述べたが、健康状態を確認しながら、2022年に久米島太史氏関係の織物・副食品調査、南風原文化センターでの染織資料調査、豊見城市教育委員会の沖永良部島関係の衣装調査などを行った。これらの調査により、琉球・沖縄の染織文化に関する知見がより深まったので、経験を反映させた著書を刊行する予定である。 「研究実績の概要」においても既述したが、表題『沖縄の布』と名付けた著書は4章構成で、第1章が染織研究史、第2章は染料について、第3章は琉球産布の素材について、第4章は近世琉球の服飾という内容である。現在、第2章・第3章を終え、第4章は手直しの途中、第1章は草稿の段階である。体力・気力ともに回復しつつあり、執筆活動に集中する準備は整ったので、残りの課題遂行期間を計画的に使う。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、具体的には次のように推進する。 執筆活動については2023年5月~6月中に第4章「近世琉球の服飾」(仮題)を終え、7月~10月中に第1章「染織研究史」の部分を完成させる。11月~12月中に校正を終え、本年度の12月、遅くとも2024年度の2月頃までには単著として刊行する計画である。本年度の研究活動は執筆活動に重点を置きつつ、各学会において積極的に口頭発表を行う。当面の予定としては、7月の沖縄民俗学会で発表することが決定している。 執筆活動については全力を挙げて取り組み、可能な限り早く完成させる所存であるが、活動の進行状況によって、県外の琉球の染織品を所蔵する博物館及び美術館などで資料調査を行う期間を設ける。その理由として、文献記録に記された染織品、或いは相当品を多数実見することが、論拠を裏付けるための良策と考えるからである。
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Causes of Carryover |
2020年5月に突発性難聴、めまいなどを発症し、同年は耳鼻科へ通院した。大学病院で精密検査を受けたが原因は特定できず、2021年の春には眼科でも精密検査を受けた。現在は容体も次第に落ち着いてきたので、体調不良の時のみ通院している。 2022年度まで続いた「緊急事態宣言」による調査活動の制限と、自身の健康状態の不良により、やむを得ず計画を延長した。しかし現在は体調も戻りつつあり、遅延していた研究活動の巻き返しを図っているところである。 2023年は、体調が良好な時期に、久米島の旧家(太史氏)所蔵のハチマチや衣装・南風原町所蔵の花織見本帳の調査・沖永良部島の衣装調査などを行ったので、その調査で得た知見を反映させ、著作の刊行に活かす予定である。刊行物へ充てる予算としては、概算で150万円とする。その他、コロナ禍による研究活動の制限によって中断していた県外博物館や美術館等の所蔵する近世琉球の染織品なども見学する予定をしており、こちらは出版に掛けた費用の残りをあてたい。
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