2019 Fiscal Year Research-status Report
Children's world depicted in Ukiyo-e from the Edo period to Meiji Restoration -A change in Children's culture and the toy paintings as an educational tool -
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18K00169
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
藤澤 紫 國學院大學, 文学部, 教授 (70459303)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 浮世絵 / 玩具絵 / 子ども絵 / 文明開化 / 出版文化 / 教育ツール / 江戸時代 / 明治時代 |
Outline of Annual Research Achievements |
3か年計画の中間年度にあたる2019年度は、「玩具絵と出版文化」の観点を重視した。本研究は、江戸中期から明治期に出版された浮世絵版画を中心に、子どもや母子の習俗、教育の変遷を整理し、教育ツールとして広く活用されたが、研究史の中では埋もれていた「玩具絵」に光を当て、データベース化と分類を進めるものである。 今年度は、本研究の成果を、2件の論考(藤澤紫著「浮世絵の日本美術」(古田亮編著『教養の日本美術』ミネルヴァ書房 2019年11月20日 ほか)、招聘された4件の発表・講演、(比較文化研究所主催公開講演会「浮世絵とジャポニスム」会場:東京女子大学 日時 2019年6月13日 ほか)、監修を務める2つの展覧会(「くもんの子ども浮世絵コレクション 遊べる浮世絵展」2019年4月28日~6月9日・東京・練馬区立美術館、「浮世絵ガールズ・コレクション―江戸の美少女・明治のおきゃん―」2019年6月29日~8月25日・國學院大學博物館)の開催、研究所招聘の発表、計3回の講演会、ギャラリートーク、計12回の新聞連載(共同通信配信「もっと!浮世絵と遊ぼう」)、テレビ番組(NHK BS4K・NHK教育テレビ放送 EDO‐LIFE)の監修などの活動を通じて、広く公表することが出来た。 とくに今年度は、2014年度より浮世絵を介した子ども文化研究を進める「国際子ども文化研究会」における研究発表を軸にまとめた報告書『浮世絵に見る文明開化―子ども文化の変遷と教育ツールとしての浮世絵―』(平成30年度~令和2年度 科学研究費助成事業 基盤研究(C)中間報告書(平成30年~令和2年2月)を刊行した。2019年4月から2020年上半期に開催した定例会の研究内容を結集しており、10件の論文と玩具絵のデータを掲載した。浮江戸時代から明治期の子ども絵、玩具絵の最新情報を公表出来たのは大きな成果であると言えよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の大きな成果の一つである報告書『浮世絵に見る文明開化―子ども文化の変遷と教育ツールとしての浮世絵―』の詳細は以下の通りである。 巻頭の言「江戸・明治の玩具絵研究と「国際子ども文化研究会」のこれから」巻頭1.「江戸・明治の玩具絵と「おもちゃ絵芳藤」」ともに藤澤紫(國學院大學教授・国際浮世絵学会常任理事)2.洲脇朝佳(日比谷図書文化館学芸員)「国際子ども文化研究会の歩み」3、中城正堯(国際浮世絵学会理事)「「子ども浮世絵」ことはじめ―絵画史料による江戸子ども文化研究の歩み―」4、及川茂(日本女子大学名誉教授)「仕掛絵の魅力」5、太田素子(和光大学教授)「潜伏(隠れ)キリシタン信仰と聖母像──マリア観音と山姥」6、稲垣進一(国際浮世絵学会常任理事)講演録「江戸の遊び絵」7、伊藤千尋(永青文庫)「子ども絵に見る祈りのかたち」8、神谷蘭(学習院大学大学院)「歌川芳虎「蛮語和解」シリーズ」9、遠藤美織(江戸東京博物館)「『孝子善之丞感得伝』と浮世絵―「本朝廿四孝」の「信濃国善之丞」と「皇国二十四孝」の「信濃国の孝子善之丞」」10、中村みのり(学習院大学大学院)「錦絵暦にみる遊びの性質‐遊びにおける限定性について‐」 なお山口希氏(國學院大學大学院)氏を中心に作成を進める「江戸・明治の玩具絵資料集」は、対象作品や所蔵先の件数が多く、現在もデータの収集、分類を進めているため未定稿となった。並行して、主に国内の機関が所有する玩具絵のデータベースの作成を進め、早期に一端の完成を目指す。 なお、大学の業務が落ち着く2019年2月末から3月末にかけて、国内では主に関西方面、海外では欧州における第2回の作品調査を予定していたが、折からのコロナウイルス感染拡大防止に関わる社会背景もあり、実地することがかなわなかった。状況を見ながら、最終年度にあたる本年度内に、可能な限り実地を試みるつもりである。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、前掲の研究報告書の上梓に加え、究の成果を、2つの展覧会(「くもんの子ども浮世絵コレクション 遊べる浮世絵展」2019年4月28日~6月9日・東京・練馬区立美術館、「浮世絵ガールズ・コレクション―江戸の美少女・明治のおきゃん―」2019年6月29日~8月25日・國學院大學博物館)の開催、研究所招聘の発表、計3回の講演会、ギャラリートーク、計12回の新聞連載(共同通信配信「もと!浮世絵と遊ぼう!」)、毎月放映の4Kテレビ番組(NHK BS4K・教育テレビ放映 浮世絵EDO-LIFE)の監修活動を通じて公表することがかなった。 一方で、主に玩具絵のデータ収集を目的とした、国内、海外における実地調査は、社会情勢を反映した渡航、移動の自粛により、貴重な機会を中止、延期せざるを得なかったことは大きな痛手であった。 そもそも玩具絵は、使用が終われば捨てられる性質を有し、現在も廃棄されたり、美術品として扱われることも少ないため、デジタルアーカイブに取り上げられる例も限られていたりと。足を使った積極的な研究が求められる。一部ではあるがデジタル公開がなされている史資料や出版物から得ることができるデータの収集、分析を並行して行うことにより、可能な限り時間のロスを埋めるよう心掛ける。状況を見ながら、可能な限り年度内に調査の再会を試みるとともに、作成中の「江戸・明治の玩具絵資料集」に関しても、アルバイトの人員を増やすなどしてより大きなデータの収集と分析を重ね、成果を公表する最良の方法を改めて検討したい。 「国際子ども文化研究会」に所属する会員、外部のゲストスピーカーも加えた形で研究会を重ていく。(一部、ZOOM等による遠隔手法を用いた研究会、講演会の実地も予定している。)その成果を、2019年度に引き続き報告書としてまとめ、2021年2月をめどに2冊目の報告書を出版予定である。
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Causes of Carryover |
旅費に関しては、初年度の2018年8月から9月にかけて行った欧州諸機関(主にドイツ)における実地調査を自費で実地せざるを得なかった(一部の調査対象機関の事情で、渡航時期が前倒しになり、時期的に申請書の作成等に間に合わなかったため)ため、その分の費用も活用し、昨年度に行えなかった欧州諸機関の2度目の調査予定を年度末にかけて組んでいた。しかし、新型コロナウイルス感染症の流行により、渡欧の計画を中止(延期)せざるを得なかった。同様に、同じ時期に企画していた、国内(特に関西圏)における調査の予定も、実地することがかなわなかった。そのため、実質未使用になっているが、本年度に購入した書籍や資料などを、浮世絵を研究する本学大学院生のアルバイトの協力を得てスキャンし、基礎データの構築を進めるなどした。また、2019年4月から2020年上半期に開催した定例会の成果をまとめた報告書、『浮世絵に見る文明開化―子ども文化の変遷と教育ツールとしての浮世絵―』(平成30年度~令和2年度 科学研究費助成事業 基盤研究(C)中間報告書(平成30年~令和2年2月)50部を刊行し、執筆者、情報提供者(美術館、博物館など)、大学等に寄贈し、活用してもらうことがかなった。最終年度にあたる2020年には、第2冊目の報告書の刊行を予定している。
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Research Products
(12 results)
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[Book] 教養の日本美術2019
Author(s)
古田亮監修 藤澤紫ほか執筆
Total Pages
434
Publisher
ミネルヴァ書房
ISBN
9784623085156
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