2020 Fiscal Year Research-status Report
Children's world depicted in Ukiyo-e from the Edo period to Meiji Restoration -A change in Children's culture and the toy paintings as an educational tool -
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18K00169
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
藤澤 紫 國學院大學, 文学部, 教授 (70459303)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 浮世絵 / 出版文化 / 江戸文化 / 子ども文化 / 母子絵 / 玩具絵 / 教材 / 教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウイルス感染症拡大により、研究活動や文化事業の積極的な実地には様々な困難が生じた。本来、本研究は江戸中期から明治期といった文化の変革期を軸に、子どもや母子の習俗や教育の変遷を浮世絵などのメディア文化を介して論じることを目的としており、この時代の動向にも柔軟に対応し、①Webを用いた実践的な研究方法を模索し成果を蓄積すること、②成果を逐次、現代の子どもやその家族への有用な情報として届けることの2点を重要な目標とした。 ①に関しては、以下の2点を軸に研究成果の蓄積を進めた。 1.研究成果の蓄積:予定されていた国内外の実地調査の代案として、Webを介した資料収集とその分析に力を入れた。特に前年に引き続き教育ツールとして活用された「玩具絵」の作品データと貴重な版画の一例を資料として購入した。2.研究成果の共有:対面での定期研究会の代案として、個別のZoom会議やメールを用いた研究成果の配信と共有を試みた。 ②に関しては、展覧会、出版物、テレビ番組、新聞連載の4点を介し広く成果の発信を行った。 1.展覧会及びWEB講演会の開催:代表者が監修する「くもんの子ども浮世絵コレクション 遊べる浮世絵展 江戸の子ども絵・おもちゃ絵大集合!」(奈良県立万葉文化館)を期間を縮小し開催、YouTubeを通じてWEB講演会として動画4本を配信。2.書籍の監修・執筆:大型浮世絵本の責任執筆とウィークリーブック30冊の連載(小学館)、代表者が監修に携わるシリーズ番組(NHK)の書籍の監修(講談社)、3.番組の監修・出演:NHKのシリーズ番組「浮世絵EDOーLIFE」の監修、国際放送NHK Japanology Plus(NHK WORLD JAPAN)への出演、4.新聞連載:時事通信より、浮世絵にみる子どもと母子の生活を開設する連載「もっと!浮世絵と遊ぼう!」(12本)の配信などを通じて、浮世絵を軸とした母子絵、子ども文化の普及に尽力した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は新型コロナウイルス感染症拡大により、世界的に様々な対策が取られる中、従来行われていたような研究活動や文化事業の積極的な実地にはなかなか至ることができなかった。上記【研究実績の概要】にも示したが、そもそも本研究は文化の変革の時期における日本近世、近代の子どもや母子の暮らしに焦点を当てた研究であるため、研究成果の蓄積とともに、その成果を適宜配信し、現代の子どもたちに日本に伝わる暮らしの知恵や楽しみを可能な限りリアルタイムで還元することにも重きを置いた。 その成果は、主にWEBや郵送物を介した研究成果の蓄積、ZOOMなどの遠隔機器を用いた国内外の研究者との研究成果の共有といった、あらたな研究方法の開拓にも役立った。また、展覧会、WEB講演会、出版物、テレビ番組、新聞などのメディアにも関わりながら、研究成果の発信に携わる機会も可能な限り多く持つことを心掛け、一定の成果を上げることができた。 一方で、主に国内外の実地調査という点では、予期せぬ後れを取ることになった。昨年度も春に関西方面、2018年度に続く欧州における第2回の作品調査を予定していたが、折からの新型コロナウイルス感染拡大に際し、実地することがかなわなかった。本来は最終年度に当たる2000年度の早期に国内外における第3期の調査を試み、その史資料の検討を踏まえ、学際的なシンポジウムの開催、及び2冊目の報告書『浮世絵に見る文明開化―子ども文化の変遷と教育ツールとしての浮世絵―』を刊行する予定であったが、社会状況を鑑み、上記の方法で研究成果を蓄積し、配信するに留まったことは実に残念である。 新たな研究方法の検討と発信方法の構築を重ね、継続して研究を深める所存である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は以下の3点を核に進めており、今後は特に以下の点に主軸を置いた研究と普及活動を行う予定である。 1.江戸・明治の子ども文化とその意匠の検証:主に「病と信仰」に焦点を置き、当年までに収集した史資料の分析を進める。 2.浮世絵師が手がけた玩具絵の整理と教育ツールとしての機能の検証:これまで収集した画像資料の一覧化、データベースの構築と研究者レベルでの共有を目指す。 3.文明開化期を介した紙と絵具の検証と価格の考察:主に国内機関における最終調査を行い、その結果を踏まえ、報告書にまとめる。 2018年度より新たな研究課題として浮上した、日本美術史上における「母子像」が有する諸問題に関しては、日本における「訶梨帝母」像の波及や、浮世絵を軸とした母子像の再検討を通じ、西欧における「聖母子像」の流布との比較を行い、「母子像」の系譜を明確にする目的をもって資料収集を進めてきた。今年度はその集大成を報告書にまとめ、出版し公開することを目的に研究活動を進めている。
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Causes of Carryover |
2020年度の旅費、研究会開催費、シンポジウム開催費、及び成果報告書の出版費の使用を見送ったため、今年度の研究成果を受けて新たな調査候補となった国内機関への渡航費、資料収集費、ウェブを利用した研究会、講演会、シンポジウムの開催費、及び研究成果報告書の刊行費などに充てる。
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Research Products
(8 results)