2020 Fiscal Year Research-status Report
The sublation of the conflict between representing nature and imitating old styles in Chinse literati landscape painting from the early Yuan to the late Ming
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18K00170
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Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
宮崎 法子 実践女子大学, 文学部, 教授 (20135601)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 文人山水画 / 古画学習 / 実景 / 元代文人山水画 / 趙孟fu / 黄公望 / 沈周 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、新型コロナの感染症拡大のため、予定していた北米や、中国・台湾での調査は全く実施出来ず、日本国内の調査もほとんど行えなかった。そのため、主に文献資料と、従来入手済みの作品画像と付随資料の分析を進めた。特に、元代の文人山水画家のうちでも、実景を描く作品を残し、後世の文人画に大きな影響を与えた黄公望に着目して、画題となった土地と画家や当時の文人との係わりや、文献に残る先行する同主題の作品に関する文献資料の収集検討作業を行った。そのなかで、現存の黄公望の実景山水図に見られる筆法の振幅の大きさについて、当時の画家の古画学習が大きく影響している可能性が推察された。 元代の四大家のなかでも、出身や生涯から、他の3名ほどには文化的環境に恵まれていなかった黄公望の古画鑑賞や学習の機会は、どのようであったのかについて、僅かな資料を収集分析し、考察を行っている。一方、趙孟フの外孫として恵まれた環境にあった四大家の一人である王蒙と比較検討することで、元代文人画家における画風の展開と古画学習との係わりについて着手した。 一方、明代呉派文人画の領袖であった沈周の初期の倣古作品と、中年期の実景図「東荘図冊」との関連について、先に発表した「東荘図冊」の制作時期を確定する論考を踏まえて、初期の倣古作品から中年期の実景図の制作時期の再検討も進めているが、最終的には国外所蔵の数点の作品の実見調査が必要となる。 以上のように、元~明代に発達した文人山水画において、実景描写と古画学習の相互の関連に関して、今年度は、文献資料に基づいた研究が比較的行いやすい、画家の古画学習に焦点を当てて考察を進めた。そこで得られた新たな知見は、既刊論文の中文での刊行の際や国内のシンポジュウムの際に、一部を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナの世界的な影響下で、当初予定していた国内外の調査活動が全く進んでいないことが研究の遅滞の要因である。調査と文献資料による研究は、美術史において車の両輪のごときものであり、作品調査や実地調査を実施し、そこから得られる多くの有形無形の情報を活かして、その結果を分析し、新たな課題を発見し、次の調査を企画するという研究のサイクルが断たれてしまった状況は、美術史研究において致命的なダメージといわざるを得ない。そのなかで、文献中心の研究方法にシフトし、従来収集した資料を含め、それらの再検討と分析を行う作業を続けた。そこから、新たな仮説や新知見が得られたが、それを確認検証するためにも、調査の実現が期される状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の状況は未だ不透明であるため、すぐに海外調査を再開できるとは期待しがたい。従って、当面は、これまでに収集した資料や文献資料の再検証と、さらに必要な資料の収集作業を続ける。そこから得られた新知見や、新たな発想に基づき、従来発表した研究成果を改訂し、調査の成果を見直し、その成果は、近いうちに論文としてまとめる予定である。また、国内の調査が、秋以降可能になるとの想定のもと、国内の関連作品と公刊されていない文献の調査を計画している。海外調査については、年度末に実施したいと考えるが、あるいは次年度にずれ込む可能性もある。
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Causes of Carryover |
新型コロナの世界的感染により、海外調査が実施出来ず、国内調査もほとんど行えなかったため次年度使用が必要となった。 次年度の使用計画としては、文献研究を継続しつつ、可能な調査計画を策定し、まず、国内調査を実施する。新型コロナの状況や海外の特別展開催状況などを考慮しつつ、可能であれば、年度末頃には海外調査(中国、台湾など)を行う予定である。
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