2022 Fiscal Year Annual Research Report
A Comprehensive Study of Sugito (Wooden Sliding Door) in Early Edo Period
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18K00172
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Research Institution | Tama Art University |
Principal Investigator |
木下 京子 多摩美術大学, 美術学部, 教授 (60774560)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
五十嵐 公一 大阪芸術大学, 芸術学部, 教授 (50769982)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 杉戸絵 / 引手金具 / 城の御殿 / 移築・解体 / 狩野派 / 廃城令 / 売立 / 海外流出 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は、尾張徳川家と所縁のある建中寺と相応寺、徳川家光公の廟所である輪王寺大猷院、そして杉戸絵と引手金具を比較するために、松江城・弘前城・瑞巌寺の杉戸調査を実施した。米国においてもイザベラ・ガードナー美術館が所蔵する杉戸を調査し、同館ならびにフィラデルフィア美術館のアーカイヴス調査を行った。 明治6年に廃城令が発布され、日本各地の城は陸軍省の管轄となり、廃城となり解体された御殿の障壁画や建築部材は大蔵省により売立てられ、杉戸も売却された。ボストンでは1890年代から1930年代後半にかけて、松木文恭と山中商会が中心となって日本からの美術工芸品を売立てたが、解体された御殿の杉戸も含まれていることが明らかになった。そのため、ボストン美術館付属図書館とハーバード大学付属図書館で当時の売立目録の調査も新たに行った。19世紀後半から第二次世界大戦前まで、どれだけの種類の売立目録がどのような頻度で発行されたのかを確認することは不可能なため、調べられる限りの売立目録に当たった。その結果、目録には大阪城・和歌山城・姫路城といった城名が明記されている杉戸や「竹虎図」や「獅子図」など画題が付与されている杉戸の記載があることがわかり、杉戸も米国で販売され、ガードナー夫人ら蒐集家たちが購入したことの裏付けが取れた。 杉戸の引手金具については、金具と杉戸絵の制作時期に時間差があることが調査対象の杉戸から複数点確認されたことより、引手金具は使い回された可能性が考えられる。杉戸絵の作者を特定することはできなかったが、狩野派の図像が継承されていることは認められた。制作時期により杉戸絵の表現にも変化が生じ、時代性を反映していることが類推される。また「江戸城下絵」に見られる「唐子図」などの図像に近い杉戸絵の実例が、国内外で確認された。 2024年12月を目途に、本研究の成果を書籍化することを計画している。
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