2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K00177
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Research Institution | Sojo University |
Principal Investigator |
関根 浩子 崇城大学, 芸術学部, 教授 (10553589)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | サクロ・モンテ / 劇場 / 芸術家工房 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は単独で2018年度から4年間、イタリア北西部の主要なサクロ・モンテ群の礼拝堂装飾の全体像と、装飾に携わった芸術家たち(彫刻家や画家)の全体的把握、彼らのサクロ・モンテ間の移動の有無、影響関係等を解明し、解明結果をできる限り視覚的、図式的に明示することを目的としている。同研究の独自性は、サクロ・モンテごとに個別に紹介・研究されてきた礼拝堂群の装飾家たちを、「サクロ・モンテの芸術家(工房)」という視点で包括的に捉え直そうとする点にある。また、その創造性は、サクロ・モンテ間の装飾上の影響関係を明確にするとともに、これまで日本では殆ど紹介されたことがないイタリア北西部の近世美術の担い手たちに光を当てようとする点にあると言える。 以上のような目的を達成するため、2018年度は当初の予定通り、ピエモンテ州のヴァラッロのサクロ・モンテとボルゴセージア(モントリゴーネ)のサクロ・モンテ・ディ・サンタンナの現地踏査による礼拝堂装飾の調査・写真撮影と文献収集・閲覧を行った。また、ヴァラッロのサクロ・モンテの初期に活躍した最も重要な作家と言えるガウデンツィオ・フェッラーリの1956年以来となる展覧会が、最新の研究成果を反映させる形でヴェルチェッリとヴァラッロ、ノヴァーラの三都市を会場として開催されていたため、それら三会場とミラノのサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ聖堂内の同作家の作品、並びに展覧会場に展示されていたガウデンツィオの影響を受けた画家たちの作品なども併せて実見・許された範囲での写真撮影を行い、最新の図録等を入手するよう努めた。以上のように、2018年度の現地踏査は、上記の研究目的の達成のためには不可欠な調査であったと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の補助金申請の段階から、万一採択いただけた場合には、1年目は複数の研究課題(挑戦的萌芽研究(単独)と基盤研究(C)(分担))を同時進行で進めることになることが想定されていた。それゆえ、本研究の1年目は達成できないような無理な目標設定は行わず、海外における現地踏査は1回とし、可能な範囲での写真撮影や関連文献・資料の収集・閲覧等を進める計画を立てていた。 しかし、比較的緩やかな目標設定ではあったものの、勤務先での授業や学生指導、その他多数の担当業務、また、最終年度を迎えていた他の科研費研究課題の研究成果の論文や翻訳等による公開、また、所属大学が進める地域連携活動の一環でもある地元の総合文化誌等への寄稿や連載執筆のための調査・研究にも多くの時間を費やさねばならず、文献収集も十分に行いえたとは言えず、さらに、入手できた資料や文献を精読する時間も確保できなかったと言えるため、遺憾ながら以上のような自己評価となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度以降も当初の研究目的・課題達成のため、遅れを取り戻しながら、申請時の研究計画に従って調査・研究を進めていく予定である。 2019年度は、現地の管理財団や研究者等の協力を得ながら2度の現地踏査を実現したい。そしてピエモンテ州のクレアとオルタ(半ば調査済)、ベルモンテ、グラーリア、オローパのサクロ・モンテ群の現状確認や写真撮影、関連資料・文献の収集・閲覧を何としても実施する予定である。また、可能であれば口頭か論文による中間報告を行いたい。 次いで2020年度も2度の現地踏査を実現し、ピエモンテとロンバルディア州のドモドッソラ、ガッリアーテ、モンタ、ヴァレーゼ、アローナ、グィッファのサクロ・モンテ群の現状確認と写真撮影、関連資料・文献の収集・閲覧を実施したい。また口頭か論文による成果報告も実現する予定である。 さらに最終年度の2021年度も2度の現地踏査を実現し、残ったロンバルディア州のオッスッチョとチェルヴェーノの礼拝堂装飾の調査・写真撮影、関連資料・文献の収集・閲覧を実施する。また最終研究年度であるため、口頭や論文等による研究成果報告を行うのは言うまでもない。
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Causes of Carryover |
次年度使用額(今年度未使用額)が生じたもっとも大きな理由としては、現地における滞在期間が限られ、現地での文献調査・収集が思うに任せず、帰国後も最終年度を迎えた他の研究課題の遂行や勤務先での多忙な業務のために文献調査・収集の時間を確保できず、年度内に思うように文献を収集できなかったことが挙げられる。 また、他の科研補助金(挑戦的萌芽研究)による研究課題の現地踏査地と本研究の踏査地に重なる部分があり、交通費や宿泊費等を他の研究課題の補助金から支出できたため、その分が未使用額となった。 さらに、当初想定されたを調査先や協力先への謝金等が発生せず、未使用となったことも理由として挙げられる。また、持参する手土産代(謝礼の一部)などは自費で賄っていることも理由と考えられる。
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