2020 Fiscal Year Research-status Report
古代性の指標としての様式-東地中海世界における古代末期壁画様式研究-
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18K00181
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
宮坂 朋 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (80271790)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 古代末期 / 様式と図像の伝播 / 地中海交易 / 美様式 / ヘレニズム様式 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、2世紀から5世紀の東地中海世界の壁画の様式の発展を明らかにし、ヘレニズム様式からのかけ離れを評価することにより、古代の終焉の時期を明らかにすることである。そのために、取る研究方法としては、文献調査と、レバノンにおける実地調査による、作品のカタログ化と編年から構成される。 令和2年度には、海外調査が不可能であったため、オンライン上で閲覧できるSyriaやArchaeology and history in the Lebanonなどの専門雑誌論文や図書、過去に撮影したスライドなどの画像資料を用いて研究を行った。 その成果の一部は、論文「商業神ヘラクレス」『弘前大学人文社会科学部人文社会論叢』第9号、2020年9月、43-59に発表した。この論文で、以下のことが明らかになり、また課題として残った:①ローマ帝政末期の地下墓壁画における図像に関し、地中海交易が重要な役割を担ったこと;②様式の伝播と拡散にも地中海各地の神々への信仰のローマへの導入が関与していること;③特にヘラクレス神は、フェニキア(レバノン)の守護神メルカルトであり、フェニキア・シリア地方との交易もローマーフェニキア双方の様式の影響関係に関与している可能性があること;④ヘレニズム様式から最もかけ離れた、いわゆる「美様式」(スティレ・ベッロ)は、北アフリカのモザイクの様式として帝政末期のローマ帝国全域で広がるが、この様式に東地中海の様式がどのように関与したかについては、完全には明らかになっていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
レバノンの地下墓壁画の実地調査を主体とした研究方法を取る予定だったが、爆発事故や新型コロナウィルス禍による、さらなる治安の悪化や渡航の困難により、研究方法の変更を余儀なくされた。また、学会の延期や国内の移動困難などにより、研究発表を行うことが出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
レバノン及び海外における実地調査は中止し、過去に撮影したスライド資料のデジタル化および文献資料を用い、東地中海沿岸地域の古代末期の地下墓壁画の様式についての研究を行う。また特にいわゆる「美様式」(スティレ・ベッロ)の起源・発展・終焉とその後の東西の様式展開についても集中的に研究して、ヘレニズム様式の終焉について段階的に明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
レバノンにおける実地調査が、政情不安、新型コロナウィルス禍によって中止となったため、旅費、人件費・謝金、その他の支出がなくなったため次年度使用額が発生した。使用計画としては、文献資料・図書費、スライドのデジタル化、発表論文の翻訳、画像処理のためのソフトとパソコン購入に充てる計画である。
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