2021 Fiscal Year Annual Research Report
Styles as indices of the Classicalness – Studies of Late Antique Wall Paintings in the Eastern Mediterranean World-
Project/Area Number |
18K00181
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
宮坂 朋 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (80271790)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 古代末期 / 様式 / 壁画 / 抽象主義 / 浮彫 |
Outline of Annual Research Achievements |
具体的な研究内容としては、ヘレニズム化に対抗する「抽象主義」様式の分析、記念碑浮彫様式の分析である。前者は、1~3世紀のミイラ肖像画や板絵の「プレ・コプト」様式、皇帝肖像や凱旋門浮彫などの公共浮彫などの彫刻におけるテトラルキア様式、2世紀から4世紀の北アフリカ床モザイクのフローラルスタイルに基づく在地的発展による装飾的で平面的な様式とその広範囲な伝播があげられる。後者に関しては、ナクシェ・ルスタムのシャープ―ル一世の摩崖浮彫など、ササン朝の彫刻作品はローマ美術の影響を受けており、また、ローマにも影響を与えている。 レバノンにおける実地調査が爆発事件やコロナ禍により不可能であるため、主に文献調査により具体的な研究を進めた。また過去に撮影したスライドのデジタル化を行って資料とした。彫刻作品が壁画に与えた影響を明らかにするため、メタシェイプによる3Dデータ作成を行い、特に抽象的な作品(テトラルキア様式の彫刻)とヘレニズム様式の作品(アルピの地下墓、メドゥーサ頭部の石膏レプリカ)の石材に対する取り組みの違いの比較を行うことにより、より客観的な記述と比較の方法についての試行を行った。 研究の意義は、ヘレニズム絵画伝統とはかけ離れた様式の導入は、ヘレニズムの衰退という点からとらえるべきではなく、再現的な様式はむしろ傍流であり、古代末期はむしろ東方の美術様式を正統として積極的に選択した。 研究の重要性に関しては、このエジプト・イラン美術様式の重視の視点と、彫刻、特に公共浮彫の絵画に対する影響の重要性と関係した、浮彫における石に対する取り組みの方法の違いへの着目、3Dデータによるより客観的な記述方法の試行である。また古代末期のローマ壁画における抽象主義は、エジプトの石像技術を学んだ、ギリシア・アルカイック彫刻の抽象性と比較しうる、彫刻技法が抽象主義の契機となったことを明らかにした。
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