2019 Fiscal Year Research-status Report
16世紀フランス・ルネサンスのフォンテーヌブロー派によるタピスリー研究
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18K00184
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
小林 亜起子 東京藝術大学, 美術学部, 講師 (00618275)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | フォンテーヌブロー派 / タピスリー / フランソワ1世 / アンリ2世 / カトリーヌ・ド・メディシス / ロッソ / ペトラルカ / フランス・ルネサンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、フランスのヴァロワ朝9代目の国王フランソワ1世の治世下に、フォンテーヌブローに設立された王立のタピスリー工房の詳細、及び、そこで織られたタピスリーについて明らかにすることにある。この工房では、国王に招聘されたふたりのイタリア人画家、ロッソとプリマティッチョを中心に形成されたフォンテーヌブロー派のタピスリーが織られた。フォンテーヌブロー派のタピスリーについては、いまだ総合的な研究がなされておらず多くの課題が残されている。 2019年度は、前年度に遂行された基礎作業――フォンテーヌブローの工房についての資料収集と、フォンテーヌブロー派のタピスリーに関する情報収集とデータの整理――を継続した。当該年はとりわけ、昨年度の研究成果として発表された論文「ロッソとプリマティッチョによる「フランソワ1世のギャラリー」にもとづくタピスリー」のなかで課題として残されたテーマ、すなわち、ロッソとタピスリー芸術の関係について、より掘り下げた調査を行うことに重点が置かれた。 研究を進めるなかで、パリを中心に実施した現地調査をはじめ、滞在中に欧米の研究者から入手した情報は、本研究を遂行する上で有益であった。一連の成果の一部は、論文としてまとめられた。ロッソの手になるタピスリーは、上述のタピスリー連作〈フランソワ1世のギャラリー〉のみしか知られていない。これに対して同論文では、ロッソがこの連作を手がける以前に、フランソワ1世の息子アンリ2世とカトリーヌ・ド・メディシスの結婚を機に、国王フランソワに強くアピールするタピスリーの制作を試みていた、という新知見を提示した。本論文で示された王権表象をめぐる図像解釈は、2020年度にとり行う調査研究に大きく寄与するものといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内外における作品の調査・収集作業はほぼ予定通り遂行しており、これらの研究成果として、国王フランソワ1世に仕えたロッソとタピスリー芸術についての新知見を有した論文を発表している。さらに2019年度は、ルネサンスから18世紀にいたるアンシャン・レジーム期に国王に仕えた画家の手になるタピスリーという視点から、18世紀フランスのタピスリーに関する仏語論文も公刊した。以上の点から、現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると見なすことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の調査・研究の進め方にとくに変更はなく、資料収集、実見に基づく作品調査を実施する。海外での調査に取り組む際には、現地の美術館学芸員と連絡をとりながら、情報交換、作品考察を行う。現在、世界的に蔓延しているコロナ・ウィルスの感染状況を踏まえ、万が一渡航が困難な場合には、国内外から文献資料をはじめ、作品の細部考察が可能な高画質の作品画像を収集しながら、研究を遂行したい。
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Causes of Carryover |
次年度使用が生じてしまった理由としては、2019年度末に実施した欧州への海外出張の期間を短くし、滞在予定先を一国に絞らざるをえなかったことが挙げられる。こうした変更を余儀なくされた背景には、コロナウィルスの感染拡大状況の悪化があった。次年度使用分は、滞在することができなかった出張先において、まとまったかたちで購入する予定であった書籍の購入にあてることにしたい。
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Research Products
(3 results)