2020 Fiscal Year Annual Research Report
Study of the Fontainebleau School and French Renaissance tapestries
Project/Area Number |
18K00184
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
小林 亜起子 東京藝術大学, 美術学部, 講師 (00618275)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | カトリーヌ・ド・メディシス / アンリ2世 / タピスリー(タペストリー) / プリマティッチョ / フォンテーヌブロー派 / ヴァロワ朝 / アラベスクの神々 / 王権表象 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、16世紀フォンテーヌブロー派の画家の下絵にもとづくタピスリーについて解明することを目的としている。2020年度は、ロッソの死後、第一次フォンテーヌブロー派を牽引し、国王アンリ2世の庇護下にフォンテーヌブロー宮殿の装飾の指揮をとったプリマティッチョの下絵にもとづくタピスリーに焦点を絞り、調査・研究を遂行した。 確実にプリマティッチョの手に帰されるタピスリーとしては、ロッソとともにプリマティッチョが手がけたフレスコ画「フランソワ1世のギャラリー」にもとづく連作のほか、連作〈アラベスクの神々〉が挙げられる。本年度の研究成果は、この〈アラベスクの神々〉を考察対象とする仏語論文として発表された。そこでは、本作に織り込まれた神話図像の考察を通じて、この作品がアンリ2世と王妃カトリーヌ・ド・メディシスの統治下におけるヴァロワ朝の黄金時代を象徴するタピスリーとして構想されたものであることを明らかにした。さらにこのタピスリーが、プリマティッチョの代表作であるフォンテーヌブロー宮殿の「ユリシーズのギャラリー」と密接に結びつけられることを示し、画家の野心作として位置づけられると結論づけた。 2020年度は本研究事業の最終年であった。3年間を通じて、フォンテーヌブロー派の中核に位置づけられるロッソとプリマティッチョ、彼らの画業におけるタピスリー芸術との関わりを掘り下げて論じ、新たな作品解釈を提示することができた。一連の研究成果は、これまで看過されてきた、これらの画家とタピスリー芸術との関わりを再評価する試みとして研究史に寄与するものであるとともに、近世フランスにおける王権とタピスリー芸術との関係を考える上でも、重要な基礎研究として寄与するものである。
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Research Products
(4 results)