2021 Fiscal Year Research-status Report
江戸時代の俳諧文化における画家・絵画評価とその画壇への影響の研究
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18K00190
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| Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
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Principal Investigator |
馬渕 美帆 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (60323557)
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| Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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| Keywords | 江戸時代絵画 / 俳諧文化 / 画家評価 / 曾我蕭白 / 英一蝶 / 英一蜂 / 白隠慧鶴 / 尾形光琳 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、次の二点である。
① 江戸時代の俳諧文化において、どのような画家や絵画が高く評価されていたのかを、その理由と共に総合的に明らかにする。関係資料が多く、また既存の画家が体系的に把握されるようになった、18世紀以降の俳諧文化を研究対象とする。
② ①で明らかにした俳諧文化の評価体系が、俳画などに限らず、広範な江戸時代絵画の制作に重要な影響を及ぼしている様相を、画家や作品に即して具体的に解明する。
①に関して、論文「英一蜂『画本図編』『英氏画編』の出版事情――板元・大野木市兵衛及び大岡春卜『和漢名画苑』に注目して」を執筆した。英一蜂による英一蝶の画集『画本図編』は、大坂の大野木市兵衛から出版されているが、これは同書肆から刊行された大岡春卜『和漢名画苑』に多くの一蝶画が収録されているのを一蜂が見たことにより企画されたと推定した。また、『画本図編』は板元・大野木市兵衛において、春卜等による正統的な画譜の姉妹編である異色な画譜としての役割を期待されていたことを明らかにした。さらに、一蜂の自跋にある『画本図編』の出版意図なども併せ、当時、俳諧文化における一蝶画観が江戸と上方で共有されていたことも指摘した。同論文により、俳諧文化において高く評価されていたと見なせる画家の内、特に重要な一蝶について、江戸だけでなく上方方面での評価・影響の大きな部分を解明することができた。これまでに集めた事例等の検証で、「研究の目的」①がほぼ達成されつつある。
また、俳諧文化との関わりが深い曾我蕭白について、展覧会図録『曽我蕭白 奇想ここに極まれり』に、本研究の成果の一部を応用した作品解説9点を執筆した。
与謝蕪村と俳画を合作するなど俳諧文化とのつながりがある円山応挙について、論文「円山応挙における「前衛」のかたち」（2022年6月刊行予定）を執筆し、その作品の当代における革新性について論じた。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和3年度も、新型コロナウイルス流行の影響で図書館や所蔵先での資料収集・実地調査が予定通りには行いにくい状況が続いた。その分、進捗状況にやや遅れが生じ、補助事業期間を1年間延長申請せざるをえなかった。この問題は、新型コロナウイルスの流行が下火になれば解決されるため、令和4年度分の研究の実施により解消することができると考える。
令和3年度には、本研究において特に重要な英一蝶について、前年度までに明らかにした江戸における評価・影響に加え、上方における評価・影響の大きな部分を解明することができた。論文「英一蜂『画本図編』『英氏画編』の出版事情――板元・大野木市兵衛及び大岡春卜『和漢名画苑』に注目して」では、一蝶の弟子で江戸の人である英一蜂が一蝶の画集を大坂の板元から出版した事情と背景について詳しく検証し、当時江戸と上方で共有されていたと考えられる、俳諧文化における一蝶画観についても指摘した。これは、一蝶の上方方面での評価・影響の重要な部分の解明となる。今後は、同論文の成果を、与謝蕪村をはじめとする、上方において江戸俳壇と深く関わっていた俳人達についての考察と結び付け、一蝶の上方方面での評価・影響について総合的にまとめる。
現在、これまでに集めた事例等の検証により、「研究の目的」①はほぼ達成されつつある。もう少しの整理を経て完全な形となるため、進捗状況を「やや遅れている」とした。「研究の目的」②も、順調に具体的な事例を増やしており、達成に近づいている。従って、延長された令和4年度の補助事業期間をもって「研究の目的」①②は十分に達成される見込みである。
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| Strategy for Future Research Activity |
最終年度である令和4年度は、研究実施計画にのっとって研究を進め、本研究を完成する。令和4年度も、研究環境を一層整備し研究を滞りなく行うべく、俳諧及び日本美術関係の図書、江戸時代の出版に関する図書を購入する。また、俳諧関係の資料や作品、俳諧文化における評価に関わる画家・絵画の資料や作品等について、国内の図書館や所蔵先での資料収集・実地調査を継続する。そうした資料収集・実地調査を通じて、検討の対象となる事例をできるだけ多く集め、研究を完成させる。令和3年度は前年度に引き続き、新型コロナウイルス流行の影響で図書館や所蔵先での資料収集・実地調査が予定していた通りには行いにくい状況であった。令和4年度は残る資料収集・実地調査を実施する一方、それでもなお資料収集と調査が行いにくい部分については、代替手段として、これまでにも活用していたインターネット上の画像アーカイブ等を積極的に利用する。令和4年度は、「研究の目的」①について完全な形とした上、俳諧文化の評価体系の影響を受けた江戸時代絵画についての具体的な研究を一層進め、「研究の目的」②を達成する。
令和4年度においては、本研究の成果をまとめる作業をより進め、国内の学会等での研究成果の発表や、学術論文としての発表を行う。それらと並行して、本研究の成果を書籍にまとめるための作業を一段と進展させる。
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| Causes of Carryover |
令和3年度も、新型コロナウイルス流行の影響で図書館や所蔵先での資料収集・実地調査が予定通りには行いにくい状況が続き、年度内にすべての資料収集・実地調査を完了することができなかった。残る資料収集・実地調査を行い、研究を完成するために、令和4年度まで補助事業期間を延長申請し、当該年度内で実施する予定である。新型コロナウイルスの流行は現状において下火となってきているため、令和3年度までに完了している予定であった資料収集・実地調査を令和4年度に移行して行う計画である。
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Research Products
(3 results)
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[Book] 曽我蕭白 奇想ここに極まれり2021
Author(s)
山下裕二, 由良濯, 深山孝彰, 春木晶子, 馬渕美帆, しりあがり寿, 佐藤晃子
Total Pages
232（189～191, 193, 194, 200, 201, 203）
Publisher
曽我蕭白展実行委員会
