2022 Fiscal Year Annual Research Report
Nicolas Poussin's Theory of Vision : The Formation and Development of Tableau in Early Modern France
Project/Area Number |
18K00192
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
望月 典子 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (40449020)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ニコラ・プッサン / タブロー / 歴史画 / 王立絵画彫刻アカデミー / 視覚論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近世フランスにおける「タブロー」― 特定の機能や場所から切り離され、枠づけられることで自律した存在となる絵画 ― の成立と展開を「タブローとしての歴史画」の観点から問い直す試みである。とりわけ、ニコラ・プッサンの造形手法とそこで作動する視覚システムに着目する。 最終年度は、王立絵画彫刻アカデミーにおける、プッサンをモデルとした歴史画の理論化の問題、および、彼の中型タブローの視覚システムとアカデミーの画家たちによる室内装飾の関係、を中心に検討を進めた。前者については、アカデミー講演録の精読とともに、1667年の講演録や『古今の最も優れた画家の生涯と作品についての対話』を刊行してフランスの美術批評の確立に大きな役割を果たしたアンドレ・フェリビアンの評伝を執筆し、自立した美術批評家としての自己イメージを、自立した「近代の」画家プッサンと重ねている様子を示した(来年度刊行予定)。また、プッサンの作品についての講演を行ったセバスティアン・ブルドンのタブローとプッサン作品を比較する論文を投稿予定である。ヴェルサイユ宮の装飾については、蓄積してきた研究成果の一部を口頭発表した。 補助事業期間全体を通じた成果として、(1)プッサンの視覚論を軸に、ルネサンスからモダニズムに至るまでの「タブローとしての歴史画」の変遷を辿った著作『タブローの物語』の刊行、(2)タブローとは機能と形態が異なる祭壇画、タピスリーおよび室内装飾と、タブローの原理を比較検討した論文の発表、(3)アカデミーにおける、プッサンのタブローをモデルとした歴史画の理論化の検討、(4)そのひとつの着地点であるジャック=ルイ・ダヴィッドの大型タブローを扱った論文の発表、等が挙げられる。これらの成果を通して、西洋に特有の絵画形態である「タブロー」研究に新たな視点を提供するという、本研究の目的を一定程度達成することができた。
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Remarks |
望月典子「〇〇世紀の芸術家列伝III ― 17世紀 第8回 ニコラ・プッサン ― 詩は絵のごとくに」多摩美術大学生涯学習プログラム、2022年 (招待)。
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Research Products
(3 results)