2020 Fiscal Year Research-status Report
Global Entanglement of Dyeing Designs: A Case Study of "Kimono" Culture
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18K00196
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
鈴木 桂子 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 教授 (10551137)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 美術史 / グローバル・ヒストリー / 服飾史 / 異文化交流 / 経済史 / きもの文化 / 京都 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究成果の一部を、論文「機械捺染とデザインに見る越境性」として『きものとデザイン―つくり手・売り手の一五〇年』(島田昌和編、2020)に寄稿、出版した。これは、日本における機械捺染の歴史を幕末から戦後まで概観し、論じたものである。 江戸時代、日蘭貿易により輸出された「ヤポンスロック」は、西洋で受容され、その後独自の発展を遂げた。こういった「きもの」より派生・発展した物質文化の調査・研究をすすめ、その成果の一端を、2020年度の国際ワークショップで発表した。具体的には、2021年3月11日・12日に、オランダのユトレヒト大学・法政大学・本学の教員(報告者)が共同で、国際ワークショップ『Dutch Textiles in Global History: Interconnections of Trade, Design, and Labour, 1600-2000』をオンライン開催し、世界中から70名が参加、議論した(https://www.textilelab.net/news/save-the-date-workshop-dutch-textiles-in-global-history/)。報告者は、““Kimonos” and their Inspired Products as Embodiments of Global Interconnectivity”と題した発表をし、現存するヤポンスロックの構造的・物質文化的な特徴を、江戸時代の小袖や夜着と比較し考察した。これにより、これらの製品がグローバルな相互接続性をどのように体現しているのか、つまり貿易を通じて日本と西洋がどのように連続・変化しているかを考察した。 その他、戦後占領期に、京都で染められた輸出用スカーフの染見本65点余りを調査、アーカイブ化し、また生産関係者に聞き取り調査をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の進捗には、コロナウィルス感染状況が強く影響してくると言わざるを得ない。アロハシャツについては、ハワイのアロハシャツ関係業者の聞き取り調査、およびアーカイブ調査、また、シンガポールでも調査をする予定であったが実施できていない。アフリカン・プリントの調査に関しては、生地資料とそのデータの収集・研究はかなり進んだが、戦後以降活躍したアフリカン・プリントの捺染業者・関係者が退職してからずいぶんの年月が経っており、聞き取り調査を進めるのが急務である。しかし、これも感染が収束するのを待たざるを得ない。スカジャンの調査も、桐生・横須賀・東京へ行くことができず、文献調査に重点をおいた研究が続いている。 2020年度に計画をしていた国際ワークショップ『Dutch Textiles in Global History: Interconnections of Trade, Design, and Labour, 1600-2000』は、オンラインに変更し、開催した。世界中からの参加者(70名)と意見交換ができたことは、自分の研究テーマをより大きな研究課題と接続して考察する切っ掛けとなり、大変有意義であった。しかし、世界中からの参加者への時差への配慮から、当初の計画から、共同授業の変更、発表人数の削減、発表時間の短縮等をせざるを得ず、次年度以降に何らか形でフォローアップをするという話し合いがすでに始まっている。報告者は、ワークショップ発表原稿をさらに拡充し、学会誌へ英文論文として投稿することを計画しているが、その他に、フォローアップとして、新型コロナ感染状況を鑑みつつ、オランダでの第二回ワークショップや発表者達による国際学会でのパネル発表などの可能性も、現在、模索している段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題を進める過程で、(1)機械捺染の近代史・現代史の断絶、(2)地域毎、製品の素材や使われた染織技術毎に分断された産業史・「きもの」文化史、という学術的に極めて重要な問題点二つを改めて認識した。この問題点に取り組むため、2021年度 基盤研究(C)に応募し、採択された。本研究課題を理論的に継続・展開させるものとして、今後は、研究課題「「きもの」文化から視るグローバル・ヒストリー―染色技術・デザイン・製品を中心に」(令和3年度~8年度)に取り組む。 本研究は、従来の地域毎、製品の素材や使われた染織技術毎に分断された産業史・「きもの」文化史では見えてこない、グローバルな広がりのある染色の文化を多極的に考察する。具体的には、(1)19世紀前半以降の日本機械捺染史(輸入・輸出を含む)の再検証・補完、(2)京都と北関東に焦点を当てた染物と織物の技術・デザイン・製品の相互関係、(3)ハワイのアロハシャツと京都の捺染産業との関係、の3点に焦点を当て、様々な時空間のレベルに染色の文化を位置づけ、その意味を再検討する。こういった具体的な事例を積み重ねることにより、捺染の技術を、「西洋から導入された技術と位置づけ、それにより淘汰されていく非西洋」という従来のナラチィヴィティを越え、日本から他地域への影響・流通をも加えた、よりバランスのとれたグローバル・ヒストリーのナラチィヴィティの創出をめざす。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由の多くは、コロナウィルス感染拡大状況に起因する。拡大状況の影響を強く受け、2020年3月以降予定していた国内外での現地調査は、ほぼ実施できておらず、計上していた旅費が執行できていない。また、計画していた国際ワークショップは、オンラインに変更し開催することができたが、その変更に伴い、計上していた招聘研究者の旅費も発生しなかった。また、参考資料購入も、実際に現地に行っての購入を考えていたので、実行できていない。 今後の使用計画もコロナウィルス感染拡大の状況如何となることが予想されるが、学生を雇用し、これまで蓄積してきた資料の整理作業をするため、ノートPC一台を購入する。また、近代日本の「きもの」文化の変容の様子や和装と洋装の拮抗に関する画像データベースのメタデータの英訳を業務依頼して進めていく。次年度後半に、国内外の調査が可能となるようであれば、旅費・参考資料購入に研究費を執行する。また、前述の国際ワークショップ発表のフォローアップとして、オランダでの第二回ワークショップや発表者達による国際学会でのパネル発表などの可能性も、現在、模索している段階である。
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Research Products
(7 results)