2021 Fiscal Year Annual Research Report
Fundamental Research on the Supports of the Paintings in the Edo Period
Project/Area Number |
18K00199
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Research Institution | Independent Administrative Institution National Institutes for Cultural Heritage Tokyo National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
安永 拓世 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 文化財情報資料部, 主任研究員 (10753642)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 呉春 / 基底材 / 芭蕉布 / 葛布 / 与謝蕪村 / 表具 / マチエール |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、昨年度が3年計画の最終年度であったが、新型コロナウイルスの感染拡大のため、計画を1年間繰り下げた。だが、今年度も、調査や出張に大幅な制限がかかり、計画通りに進捗しなかった部分が多い。 そのため、昨年度までの成果を学会発表にまとめ、成果報告とした。具体的には、当研究所保存科学研究センターの早川典子氏、および東京農工大学の髙栁正夫氏・八木千尋氏のご協力を得て、呉春筆「白梅図屏風」に類似する染織文化財である葛布と芭蕉布を赤外分光分析し、その結果を解析することで、両者の種同定を試みた。また、こうした研究成果によって得られた赤外分光分析の結果と、デジタルマイクロスコープや高精細画像等による光学的観察、および繊維断面(クロスセクション)の観察から、より「白梅図屏風」の基底材に類似した染織文化財は、芭蕉布である可能性が高いという見通しを得られた。 一方、呉春の基底材選択に大きな影響を与えた与謝蕪村の絵画表現についても、池大雅の表現との比較を具体的に検討し、論文にまとめることで、今年度の研究成果とした。 さらに、今年度は、呉春筆「白梅図屏風」に類似する基底材の作品として、新たに、絵画3点、書跡1点、表具1点に関する情報を得たが、このうち絵画2点についてしか調査が実施できなかった。しかし、表具1点については、昨年度に研究成果を公開した表具1点と同じく、呉春の絵画作品の表具として用いられたもので、画像等の提供により、基底材の特徴も芭蕉布に近いことが確認された。また、呉春筆「白梅図屏風」と類似した基底材に描かれた新たな絵画1点を入手し、その光学的な調査と分析を進めたところ、やはり芭蕉布に近い特徴が見いだせた。 以上、現段階で見いだせた呉春筆「白梅図屏風」に最も類似する基底材は、絵画のみならず、書跡の基底材、染織、表具にも用いられるもので、いずれも芭蕉布に近いという結果が導き出せた。
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