2020 Fiscal Year Research-status Report
礼拝像・祭具制作における素材選択の心性史:材質とその聖性の喧伝に関する調査・研究
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18K00202
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Research Institution | Administrative Agency for Osaka City Museums |
Principal Investigator |
児島 大輔 地方独立行政法人大阪市博物館機構(大阪市立美術館、大阪市立自然史博物館、大阪市立東洋陶磁美術館、大阪, 大阪市立美術館, 学芸員 (50582376)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 天平 / 素材 / 仏教美術 / 正倉院宝物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は新型コロナウィルスによる感染症拡大の影響を受けて調査のための出張等の研究活動の基本的な行動が著しく制限されたため、予定された調査・研究を計画的に進展させることが困難であった。その中で、所属する大阪市立美術館において幸いにも特別展「天平礼賛」を10月27日から12月13日にかけて開催することができた。この展覧会において、これまでの研究成果の一端を公開することができた。 奈良時代の仏教美術や正倉院宝物のいわゆる天平美術は、日本美術史において古典と位置付けられる。このことについては明治以降に日本美術史が体系化して整備された際の価値観の投影であるとする考え方が近年一般化しつつある。「古典」や「伝統」が近代の所産であるとする考え方は、美術だけでなく文学や芸能等様々な分野で共有されつつある概念であるが、この展覧会を開催したのはそのことに対して疑問を投げかけることにもあった。 というのも、日本美術史が体系化されるのは確かに明治を待たなくてはならないが、しかしそれ以前の早くから天平美術は「古典」としての位置を占め、各時代の美術の手本としての役割を果たしていたのではなかったかという疑問を、実作例を提示することで検証できるのではないかと考えたからである。天平美術は前近代を通じて常に振り返られる存在であったことがうかがえるのである。 天平美術が美術史上の古典として扱われるのは、単に造形上の問題だけでなく、信仰の問題や本研究で問題としている素材に対する心性的な問題も多分に含んでいることを本展の出品作品からもうかがうことができるのではないかと考えた。この問題については、今後も引き続き考察を重ねる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は新型コロナウィルスによる感染症の拡大防止の観点から出張等が著しく制限されたため、当初予定していた調査・研究の遂行が困難であった。疫病の流行とその根本的解決を図ることのできないままの行き当りてきな対策がここまで長期化するとは当初予期していなかったことで、今後もなお続くことが予期される。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は研究計画の最終年度に当たるが、これまでの調査研究成果を踏まえ、木彫像や銀器の調査研究成果をまとめるとともに、中国・台湾における玉器・金属器の調査等の海外での調査を計画していたが、海外での調査活動は現時点でほぼ絶望的である。研究計画を変更して期間を延長したうえで調査を再来年度に持ち越すか、あるいは国内での調査研究を踏まえて成果としてまとめるか、状況を見すえて慎重な判断したうえで研究を推進したい。
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Causes of Carryover |
本年度は新型コロナウィルスによる感染症の拡大により行動が著しく制限されたため、予定されていた調査・研究も変更を余儀なくされた。これにより、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(5 results)
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[Book] 『探検! 奈文研』2021
Author(s)
奈良文化財研究所編
Total Pages
212
Publisher
独立行政法人 国立文化財機構 奈良文化財研究所
ISBN
978-4-909931-40-5
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