2022 Fiscal Year Research-status Report
礼拝像・祭具制作における素材選択の心性史:材質とその聖性の喧伝に関する調査・研究
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18K00202
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Research Institution | Tokyo National Museum |
Principal Investigator |
児島 大輔 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 主任研究員 (50582376)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 仏教美術 / 素材 / 供養 / 転用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度も引き続き礼拝の対象となる彫刻・工芸等の美術作品の素材に注目しながら、聖性を獲得する過程とその心性を明らかとすることを目的とした調査・研究をおこなった。当初の研究計画では昨年度が本研究課題の補助事業の最終年度の予定であったが、新型コロナウィルスによる感染症の拡大とその防止を目的とした施策等のために調査を目的とした出張が制限されるなど研究活動が著しく制限されたため、本年度へ繰り越しを行ったところである。本年度はこれまでの状況からはいくぶん改善が見られたものの、いまだ十全な研究活動を行うための基盤が整ってはいない。そこで、本年度は調査対象となる作品の所蔵者や管理機関の負担を考慮して、美術館・博物館等の展覧会等に出品・公開された作品を主たる調査対象として調査・研究を行うにとどめた。 また、2022年9月に研究代表者が所属研究機関を変更したこともあり、本年度下半期の本研究課題に関する調査・研究活動はやや停滞することとなった。こうした状況に鑑みて、本年度予定していた調査の一部および研究成果の取りまとめ等については来年度へ再度先送りすることとした。 本年度は作品の素材調査等も困難が予想されたことから、上記の通り展覧会出品作などを中心として素材の転用という観点から故人の生前に愛用した品の転用品などに注目しながら作例の蓄積をはかった。具体的には寺院の幡、打敷や袈裟など、故人が生前愛用した衣類を追善供養のために供養具・僧具に転用した作例や、故人直筆の手紙等を料紙として写経を行った消息経と呼ばれる作例などである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
社会情勢がいまだ調査・研究を十全におこなう環境となっていないこともあるが、それとともに所属機関の業務が多忙であったことに加え、年度途中に所属機関を変更したこともあり、当初予定していた調査・研究をこなすことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は本研究課題の最終年度としてその成果を取りまとめるとともに、研究課題を発展的に継承して新規採用された課題に取り組むことで、継続して礼拝の対象となる彫刻・工芸等の美術作品の素材に注目しながら、聖性を獲得する過程とその心性を明らかとすることを目的とした調査・研究を行いたい。
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Causes of Carryover |
本年9月に研究代表者は所属機関を変更したこともあり下半期の本研究課題に関する活動はやや鈍化した。また、いくぶん緩和傾向にあるとはいえ、いまだ新型コロナウィルスによる感染症拡大防止の観点から資料調査等については制限があり、研究活動の推進は思うに任せぬところがあった。無理に推し進めることなく落ち着いた環境下で調査・研究を進めるため、次年度に繰り越すこととした。
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