2018 Fiscal Year Research-status Report
Innovating notational systems of Japanese medieval chants
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18K00212
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Research Institution | Kyoto City University of Arts |
Principal Investigator |
藤田 隆則 京都市立芸術大学, 日本伝統音楽研究センター, 教授 (20209050)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 旋律型 / 発声 / 記譜法 / 能楽 / 民俗芸能 / 声明 / 回旋譜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本の中世に起源をもっている音曲の担い手らとの対話をつうじて、担い手らが口頭伝承の中で習得したリズムや旋律を、彼らがもっともおもしろく、適切だと感じる次元において把握し、彼ら自身の実践や、外部者による鑑賞に役立つような「記譜法」を考案することである。対象とする分野は、声明などの仏教声楽、能楽、そして語りを中心とした民俗芸能である。初年度(2018年度)は、能楽師、声明家、民俗芸能の担い手に対して、インタビューをおこなった。声明家に対しては、旋律を図形的に書き表す楽譜「回旋譜」についての質問をおこなった。その結果、回旋譜は見てわかりやすいものではあるが、本来の楽譜と同等の権威をもつものではない、ということが明快にしめされた。能楽師へのインタビューでは、謡は、そのドラマ的な効果を考えながら演出法を変化させなければならないことについての情報をえることができた。たとえば、主人公が幕からでてきて、橋掛かりを歩む間に、歌の音韻のひとつずつは、最初は長めにいうが、だんだん短くしていかなければならないのである。それは、演劇の人物の輪郭が、舞台上の聞き手に近づくにしたがって目の前にでてくるにつれて、だんだんはっきりしてくるというような、場面の変化とも対応してさせるという工夫である。もちろん、これは必ずしも観客に伝わる効果というわけではない。民俗芸能については、題目立の練習風景の観察をおこなった。そこから、旋律を構成するための基本的な旋律パターンをいくつか特定することができた。これらの研究を踏まえて、次年度では、「記譜法」の考案という応用的研究に踏み込むことにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要欄に示したとおり、本年度は演奏家へのインタビューを複数回おこなっている。それと平行して、映像プロデューサーやカメラマンにもインタビューをおこなったのだが、記譜がなぜ、なんのために、だれにとって必要なのか? という問いを、インタビューのさいに、逆になげかけられる場面もあった。わかりやすい記譜というのが、伝承においては、本当に必要なのか、それをとおして普及をさせるという道筋に、成功の見込みはあるのか? 初年度において、本研究に対する根本的な疑問を得ることができたのは大きな収穫である。今の段階では、それに対して答えはでない。しかし、次年度には、実際に民俗芸能や能楽の楽譜づくりをおこなう予定である。それを通じて、上記の問いに対する私なりの解答をみつけていきたい。 また、能の太鼓や笛などの打楽器の複雑なパターンを、もっともシンプルなかたちにして記し、それを教育目的に使うための手順の開発を、昨年までにおこなった(笛と太鼓の教室限定練習曲の作成)。これによって、中世芸能と音楽のエッセンスを図示して、普及させていくための道筋がみえてくることとなった。次年度にはさらに別の旋律型や、別の楽器の組み合わせを考えつつ、シンプルな能楽の練習曲をつくりだすことをめざしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
能楽については、実際の上演映像にあわせて記譜を提示するという作業を、現在、スタンフォード大学音楽学部との共同研究の中で、すすめている最中である。記譜が正確でなければならないことはいうまでもないが、正確さの種類やレベルは、担い手、聞き手などの立場によって、また、それぞれが音楽様式にどの程度熟達しているかによって、さまざまである。その意味で、もとめられる正確さがことなるのである。今後は、すくなくとも、誰のための記譜かということを場面場面において常に意識しながら、作業をすすめていく。 同じことに注意をはらいつつ、本年度は、中世芸能の題目立について、秋には、《石橋山》という長年演じられてこなかったレパートリーの復活上演をおこなう予定である。そのためのテクストおよび記譜を作成する予定である。題目立の旋律型は、単純であるが、その選択には自由があり、歌い手は伝承の過程において、その自由を妨げられるようなことになってはならない。記譜の上にふされた、「読点」などのわずかな記号が、そういった自由を阻害することになりうる。また、文字へのルビの振り方にも慎重さがもとめられる。産み字をどのようにシラブルとかかわらせるかは重要な技法であるが、それを阻止してしまうようなルビをつけてしまっては、将来的にはよくないことになるかもしれない。題目立保存会との議論を重ねつつ、現在考えられる最善の記譜を提案していきたい。
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Causes of Carryover |
予定していた入力アルバイトや記譜のデザイン作成などの作業をおこなうことができなかったため、次年度にもちこすことになった。
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Research Products
(6 results)