2018 Fiscal Year Research-status Report
手がかりの提示による空間における身体誘導のための新しいメディア表現方法論の研究
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18K00218
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Research Institution | Tama Art University |
Principal Investigator |
菅 俊一 多摩美術大学, 美術学部, 講師 (30740716)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野間田 佑也 多摩美術大学, 美術学部, 講師 (20627004)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 表現方法論 / メディアデザイン / コグニティブデザイン / 身体誘導 / イメージ生成 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の初年度である2018年度は、研究目的として掲げた「点や線などのリミテッドな情報提示によって、空間内で鑑賞者の身体誘導を行う」新しい表現方法を開発する初段階として、これまで研究者自身が「リミテッド視覚情報をトリガーとする新しいメディアデザイン手法の研究」(挑戦的萌芽研究/15K12844)で行ってきた「視線」という要素によるイメージ生成の手法を発展させた。具体的には、空間内に複数の顔の図版を配置し、鑑賞者がそれらの図版がもたらす視線の流れを追いかけるため、首の向きや身体の方向転換など、身体の移動を能動的に誘発させる体験を設計した。この試みにより、空間に対して「視線」という人間が意味を読み取り空間内に存在を知覚するようなイメージを用いることで、従来の紙やディスプレイといったメディアが掲示する壁や床面に対して平行の方向しか示せないことに対して、自由に空間内での指向性の設計できることが確認できた。 また、「身体誘導のためにどのような手がかりの提示があり得るか」という基本要素や原理の探求の一貫として、身体によるインタラクションとイメージ生成の関係についても合わせて検証を行った。具体的には、冊子状の内側に描かれた図版について、 鑑賞者自身が手で重ね合わせるという身体動作を行うことで図版のその後をイメージさせるという体験を設計した。 これらの試みは、松屋銀座にあるデザインギャラリー1953にて展示という形で実践的な知見を得るためのプレゼンテーションを行うことで、実際に空間内に配置した際の設計手法や、そのような体験について不特定多数の鑑賞者がどのようなふるまいを行うかということに関して、実践的な知見を得た。本研究のような表現やデザインに関する研究は展示のようなアウトプットを積極的に用いることで研究と実務のギャップを乗り越え、成果を社会へと還元することにつながると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究のような表現研究の場合、これまでの先行事例のリサーチと平行する形で試作を繰り返し、実際に試作を体験する中で起きる知覚作用・視覚効果などを確認しながら、手法として機能する要素を絞り込んでいくということが重要になると考えている。そのような考えからすると、2018年度においては、一度、小規模ではあるが展示という形で実際に体験を空間内に作り上げ、多くの鑑賞者によるユーザーテストのような形で、本研究が提示しようとしている可能性の一端を初年度に示すことができたのは、非常に大きな意義があった。 また、実際に空間を使用しながら身体誘導を伴う体験設計をしていったことで、身体誘導を生成させるための空間の広さと提示する図版の大きさの関係を変数として、より大規模な空間において移動距離や姿勢の変化も伴う身体誘導設計の可能性が見えたことと、描かれた顔が発する視線のような、人間の脳内で生成するある単一の方向への指向性を持ったエレメントを用いることで、従来のメディアが持ち得なかった3次元的な誘導イメージが生成できることが確認できたことは、本研究の目的である「空間内での身体誘導」において、今後の研究・作品制作において重要な示唆を与えるものになっている。 一方で、より能動的に身体そのものを大きく移動するための、視覚的エレメントについてはまだ整理がされていない状況のため、こちらについては次年度以降、文献や様々な事例のリサーチや試作を繰り返すことで、実践可能な段階へ進めていきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策は、大きく分けて2つある。一つは、大規模な空間において静的な情報提示によって、方向転換などだけでなく、歩く・手を伸ばす・姿勢を変化させるといった大規模な身体誘導を行うためには、どのような図版・エレメントを選択し、どのように提示するかを検証し実装することである。特に、図版・エレメントに関しては、過去にグラフィックデザイン領域などで取り組まれてきた図版やサインなどの知見といった先行事例を整理することで、効果的な図版の抽出を次年度には行いたいと考えている。また情報の提示方法に関しては、大規模空間において実装する場合、誘導先に情報提示を行ってしまうとサイズの問題から視覚認知が困難になり、情報を提示したことそれ自体が認識され難くなる可能性がある。このような問題を解決するため、視界に直接情報提示を行うことができるMR技術などを参考にしながら、メディアデザイン技法として有効な手法を開発したいと考えている。 推進方策の二つ目は、検証・開発・実践を行った表現自体をどのように方法論化を行い、成果として結実していくかである。その一つとして、空間における簡易なプロトタイピングツールをマニュアルとセットで開発するということが想定できる。空間に物理的に情報を移動・更新可能な形として設置し、ユーザーテストを行うことで効果を体感するというプロトタイピングを効率的に繰り返せるようにすることで、表現方法論自体を実際に実行可能なものとして社会に提示できるのではないかと考えている。また、合わせて、そのようなツールによって構成された作品の展示発表を合わせて行うことで、手法の開発・実践可能なツールの開発・ツールによって作られた表現の事例という3つを同時に提案することが可能になると考えている。
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Causes of Carryover |
当初は、より大規模な試作及び成果発表展示準備として、本年度の機材購入を想定していたが、機材自体が高額であることと、機材の仕様が変わりつつある過渡期であるため、展示の規模がまだ確定していないため購入を見送り、次年度使用額が生じている。 これらについては、展示の場所や規模が確定される次年度に、機材購入の物品費として使用する予定である。
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Remarks |
松屋銀座7Fデザインギャラリー1953にて、2019年3月20日から4月15日の期間にて行われた、研究成果発表展示のwebサイト
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Research Products
(1 results)