2019 Fiscal Year Research-status Report
Fusing Art Activities of Jaoanese Painting and Clinical Art : Synthetic Development with Psychological Approaches
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18K00219
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Research Institution | Bunka Gakuen University |
Principal Investigator |
柴田 眞美 文化学園大学, 造形学部, 教授 (10260978)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉田 秀二郎 文化学園大学, 国際文化学部, 教授 (70350204)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 日本画画材 / 臨床美術的課題 / 健康心理学 / 心理尺度 |
Outline of Annual Research Achievements |
創作実践およびアンケート調査(回答者の延べ数223名)の分析を行った。「創作実践を体験しての感触・実感の質問」と「芸術療法体験尺度改訂版の5因子」に関する、分担研究者による量的分析の結果:同じ対象での異なる課題での比較において、通常の画材×通常課題では、後半課題の方が「画材の味わい・対話」において高くなっていたものの、芸術療法体験尺度5因子の指標では有意差はなかった。また、通常の画材×臨床美術的課題と日本画画材(ライト)×臨床美術的課題の比較の結果、「進歩や達成感」、「自己肯定感」では、前者が高く、芸術療法体験尺度5因子の「満足感」では後者の方が高かった。次に異なる対象・異なる創作実践での比較では、「創作実践を体験しての感触・実感」のすべての項目と、「芸術療法体験尺度」の内の「気持ちの解放・安定」「満足感」「自己理解」の項目において、日本画画材(ヘビー)×臨床美術的課題の創作実践が、優位に心理的効果が高かった。これら3つの尺度のうち、「気持ちの解放・安定」「満足感」は、健康心理学的意義として、例えばスポーツなどでも得られるが、「自己理解」は芸術的な制作や創作に特有なものではないかと考えられた。代表研究者による質的分析においても、「縛られずに」「絵具が心を開いてくれた」等の記述がこれらの結果と呼応する要素であると考えられた。 これらの成果を、9月の学内研究発表会において、「日本画と臨床美術を融合した創作実践―心理学的質的分析と構造化による開発―中間報告:創作実践における心理学的量的データについての探索的検討」(杉田)、「同―中間報告:創作実践の紹介と振り返り記述部分の分析経過」(柴田)として口頭発表した。 昨年度の設問事項を、創作実践前後での比較検討ができるような内容に改善し、創作実践及びアンケート調査を第二陣として実施した。成果作品は、11月の学内行事において公表展示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初学者を対象とした創作実践の第二陣の実施及び、創作実践の前後を比較すべく改善したアンケート内容によるデータ収集を行うことができた。新たに収集したデータの分析に時間を要しており、したがってこれらと関連付けた、臨床美術を修めた美術家の方々への設問内容作成も進行中である。現在、鋭意これらを進めているところである。また、日本的美意識を色濃く有する日本画の画材を用い、臨床美術を応用した創作実践が、異文化圏でどのような反応を得るものかの調査のために、臨床美術と関連深い、エンカウンターアートが実施されているフィンランドの研究者と、11月の国際学会にて、対面してコンタクトをとることができた。教育業務が一段落を迎える3月に現地に赴き、創作実践の実施及び調査を行う計画を進めていたが、折しも新型コロナウィルスの感染拡大による影響のため、未だ果たせていない。 しかしながら、第一陣として得たデータの分析から、「日本画と臨床美術を融合した創作実践」の心理学的効果についての傾向がつかめ、これを9月の学内研究発表会における2件の口頭発表に結びつけることができたこと、及び、創作実践において得られた作品の一部を、秋の学内行事にて成果として公開展示することができた。 これらの進捗状況により、総合的に「やや遅れている」と判定した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの創作実践の分析の結果から、「日本画の画材(ヘビー)×臨床美術的課題」が最も、心理学的効果に寄与することが判明した。このことは質的な個々の記述を見ても、日本画のアナログな画材は、たとえ専門的な画材に造詣が深くない美術の初学者が対象であってもと、その画材が有する特質から創作者の心に働きかける力を有していることを示唆していると思われた。そこで、今年度はさらに岩絵の具の中でも、特に発色の良い天然絵具をも供用して創作作実践を行い、参加者の感触を確かめたい。 さらに、本研究の創作実践に携わった初学者ばかりでなく、臨床美術を修め自らも創作活動を継続している美術作家(数名~10名程度)への設問内容を整えインタビュー調査を実施する。一方、一般社会人にとって、美術の力というものが実感されているのか否か、実感されているとすればどのようにであるのか、がつかめるような調査を加えたい。 フィンランドとのコンタクトは続け、状況が許せば、研究期間中に渡航して、創作実践の実施と調査を試みたいが、新型コロナウィルス感染の終息が読めない現在、その実施が計画した研究期間内に可能かどうかを危惧しているところである。
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Causes of Carryover |
異文化圏での調査のため、フィンランドのエンカウンターアートの研究者とコンタクトをとり、3月に渡航して創作実践の実施と調査を行なう計画を進めていたが、新型コロナウィルスの感染拡大の影響により、次年度に見送らざるを得なくなった。 また、一般社会人を対象にしたオンラインによる調査も、既に実施した創作実践の分析を今少し進めてから、設問事項を吟味し、次年度に実施することにした。
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Research Products
(2 results)