2021 Fiscal Year Research-status Report
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18K00221
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
奥間 政作 早稲田大学, 文学学術院, その他(招聘研究員) (40711213)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 戦後 / 美術 / 平和 / イメージ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究は主に、戦後における原子力のイメージが美術作品にどのように表されてきたかについて調査を行った。原子爆弾による惨状を描き出した丸木位里・俊による《原爆の図》シリーズは、戦後における平和教育や巡回展などを通じて多くの人々に知られているが、例えば古沢岩美による《憑曲》(1948)や鶴岡政男による《人間気化》(1953)、小山敬三による《大浦天主堂》(1957)なども原爆の表象が確認できる。こうした作品については既に岡村幸宣による『非核芸術案内ー核はどう描かれてきたか』(岩波書店 2013)によって紹介されているものの、戦後の美術の潮流の中で各々の作家がどのように原子力と向き合ったか、という点についてはあまり深く紹介されていないように思える。そのため本研究では、こうした原子力を題材とした作品が生み出された同時代の美術雑誌や新聞記事を収集し、戦後における各画家の原子力に関する意識やその受容のありかたについて調査を行ってきた。現時点において、確固たる結論には至っていないものの、戦後の社会における民主化運動の高まりや価値基準の転換といった社会情勢を背景として、戦争によって破壊された人間の存在や尊厳をどのように表現していくべきか、という点を画家達は模索していたように思える。次年度はこうした作品群を戦後の絵画史のなかにどのように位置付けられるか、という点についても調査・分析を行っていきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年度に引き続き、オンラインによる講義や別件の研究を進める必要があったため、本研究のエフォートは低いままとなっている。今後は昨年度の遅れを取り戻せるよう、エフォートの割合を増やしていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初からの事案であった各地の慰霊碑の調査や海外での調査が行えていないが、次年度は可能であれば渡航し、現地での調査を行う予定である。また、当初の計画にはなかった原子力と平和イメージについても当初の予定に加えて研究を進めていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
海外における調査が未了のため、旅費の項目をうまく消化することが出来なかった。 次年度では可能な限り海外調査を行えるようにしたいと考えている。 また、人件費については、RAの希望者を見つけ出すことができていないため未消化となっている。
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