2022 Fiscal Year Annual Research Report
The Formation of Peace: Focusing on the Representation of Peace in Postwar Japan
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18K00221
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
奥間 政作 早稲田大学, 文学学術院, その他(招聘研究員) (40711213)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 戦後 / 美術 / 平和 / イメージ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、昨年度に引き続き戦後にる原子力イメージや原子力を題材とした作品の調査を行うと共に、戦後の「文化国家」のスローガンが美術にどのような影響を与えたかについての調査を行った。また、これまで継続的に進めてきた各種新聞資料および『美術運動』や『BBBB』などの美術雑誌からのデータ収集も進めてきた。こうした調査をもとに、戦後の平和イメージと造形についての分析を行ってきたが、「平和」を主題とした造形は、おおまかに述べると以下のジャンルにて表現されてきたといえよう。 1 慰霊碑などのモニュメントをはじめとする造形 2 反戦や原水爆を題材としたイメージ 3 「平和」の名を冠する美術展などの展覧会 1に関しては沖縄の慰霊碑を中心に調査を行ってきたが、「平和」を謳うモニュメントへの美術家の関与はある程度確認することが出来る。例えば、広島の塔は圓鍔勝三が関与しており、その主要なモチーフはハトが用いられている。しかし、こうした慰霊碑に付される碑文の文言には「英霊」や「みたま」などといった文言が付されていることが多く、モニュメントに用いられるイメージと方向性が合わないことも指摘出来る。研究のまとめにおいては、こうしたモニュメントの特質について言及することとする。2に関しては、矢部友衛の「平和署名」(1951年)などが上げられるが、こうした美術作品が生まれる一方で、原爆の表象は「美術」のみならず、他のメディアでもなされており、特に1940年代後半や50年代にかけて、原子力の平和利用といった肯定的イメージと共に生み出された作品も見受けられる。時代の変化に伴う「平和」イメージの変遷についても研究のまとめとしたい。3に関しては、地方も含めると多くの「平和」の名を冠する美術展覧会が開催されているが、こうした展覧会の理念と出品作品の傾向などをまとめ、戦後における美術と平和の理念の関係性をまとめることとする。
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