2018 Fiscal Year Research-status Report
1960年代後半の日本における表現文化と市民運動の交差に関する文化論的研究
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18K00224
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
粟谷 佳司 立命館大学, 立命館アジア・日本研究機構, 准教授 (90411115)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 表現文化 / 鶴見俊輔 / フォークソング運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、表現文化と市民運動が交差する領域についての文献・資料調査と関係者への聞き取り調査を行った。市民運動と表現文化に関連する文献・資料調査は、主として国立国会図書館、立教大学共生社会研究センターで行い、聞き取り調査は当時の状況に関して複数の当事者に行った。 研究内容に関しては、1960年代後半を中心とした鶴見俊輔の言説・思想と市民運動との交差を起点としながら、表現文化の諸相を多面的に理解するために、鶴見の著作、市民運動についての言説と「ベ平連」に関する文献資料の調査・分析を行った。そして、鶴見の文化・芸術論と市民運動に関連する議論の表現文化への影響を、1960年代後半の日本におけるフォークソング運動に関わった片桐ユズル氏、中川五郎氏への聞き取りと当時の雑誌や文献により検証を行った。「ベ平連」の活動と表現文化の関わりについては、吉岡忍氏への聞き取り調査を行った。また、市民運動と交差した表現者として、岡本太郎、横尾忠則、粟津潔の活動を中心に、作品、文献資料の調査を行った。 研究実績に関して、本年度は学会報告(日本ポピュラー音楽学会第30回大会、第23回進化経済学会名古屋大会)、公開セミナーでの報告(公開セミナー「マクルーハンとAI時代のメディア」青山学院大学総合文化政策学部「映像翻訳ラボ」)、著書(単著)の出版を行った。 今後の研究の展開としては、当事者への聞き取り調査の内容分析と追加の調査、関連する資料の調査・分析によって、市民運動と交差する表現文化の時代・文化状況との多面的な関係を検証していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究に関する文献・資料の収集、関係者への聞き取り調査はおおむね順調に進んでいる。本年度は、1960年代の表現文化に影響を与え市民運動の一翼を担った鶴見俊輔と関連する領域の文献、資料の調査を国立国会図書館、立教大学共生社会研究センターで行い、表現文化と市民運動に関わる複数の当事者への聞き取りも行なうことが出来た。また、本年度は研究成果の発表を行うと共に次年度に発表する予定の業績の準備も進んでいる。そして、文献・資料収集と聞き取り調査による研究課題の多面的な検証と、表現文化と市民運動が交差する歴史・文化状況から表現者の活動領域を明確化する作業を継続的に行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、戦後日本の表現文化と市民運動の交差に関して、資料・文献の調査と複数の関係者への聞き取り調査を行い、1960年代後半の文化と社会における状況の見取り図を作成する作業を行った。次年度は、聞き取り調査をまとめながら検証し、関連する資料・文献の収集と調査を行う。そして、表現文化の展開と時代状況との関連を把握するための具体的な分析により、戦後日本社会における表現文化の位相について検証して行く。
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Causes of Carryover |
当初聞き取り調査のために出張を予定していたが、出張を伴わずに実施することが可能となったため、一部次年度に繰り越すことになった。繰り越した経費は次年度の調査に使用する。
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Research Products
(4 results)