2020 Fiscal Year Research-status Report
国際美術展「ドクメンタ」の運営システムに関する研究
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18K00226
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Research Institution | Oita Prefectual College of Arts and Culture |
Principal Investigator |
山口 祥平 大分県立芸術文化短期大学, その他部局等, 准教授 (60376910)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 現代美術 / 国際美術展 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ドイツ・カッセル市で5年に一度開催される国際美術展ドクメンタの運営システムに関する調査である。本年は新型コロナウィルスの感染拡大の影響をうけ、現地カッセルでのアーカイヴ調査を延期し、主に国内での文献調査を中心とした。現地調査にむけた事前準備の一環として、ドクメンタにおける芸術監督の職能形成過程に関する調査研究に着手している。ドクメンタの独自性として、芸術監督が作品や作家選定はもとより会場選定、空間デザイン、そして予算管理、広報まで幅広い裁量を有している点である。本年は、ドクメンタにおける芸術監督のロールモデルとなったアルノルト・ボーデの初回および第2回の芸術監督としての活動記録を調査し、その概略を確認した。ボーデの活動に関する詳細については、現地アーカイヴでの資料調査を必要とするが、関連文献より彼の業務に対する外部評価などを把握し、また現地調査に向けて資料所在を確認できた。 展覧会運営法人の動向についても、法人本体が公式ホームページにおいて積極的に情報発信を行なっているため、おおまか展覧会の準備状況を把握できている。ドクメンタ15においては、従来の運営と異なり、芸術監督を個人のキュレーターではなくアーティストグループ「ルアンルパ」が務めるため、過去の運営フローとはまったく異なる形式で進められていることが明らかになった。年度内にコロナウィルスの感染拡大が収束する見通しがあれば、現地調査への着手も想定していたが、2021年1月期に再度国内で感染増加傾向にあったため、やむなく本年度も見送ることとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年目にあたる本年度は昨年度と同様に世界的な新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、現地調査を延期し、主に運営法人における芸術監督の職能に関する文献調査を進めた。現地調査が困難である反面、文献収集および調査を進めることが可能となり、さらにドクメンタ運営法人が公式ホームページでの情報発信を積極的に推し進めているため、国外からでも現地の準備状況に関する情報を把握することができた。今年度はとりわけ文献調査を通して、初期ドクメンタにおける芸術監督の業務、具体的にはアルノルト・ボーデの業務記録を確認しえたことにより、現在のドクメンタにおける芸術監督の職能との関連性について知見を得、次年度の現地調査にむけた準備作業の一助となった。新型コロナウィルスの感染拡大により、現地調査は以前延期を余儀なくされたが、上述の様な研究進捗を得ることができたため「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である令和3年度においては、これまでの事前準備をもとに現地調査を実施する。2021年5月時点では、欧州では域内全体でのワクチン接種が進行し、新型コロナウィルスの感染拡大に歯止めがかかってきている。イギリスやフランスと比較して、ドイツでのワクチン接種は出遅れているが、6月以降には全国民が接種対象となり、合わせて社会活動の制限緩和も視野に入ってきている。次年度の方策に関しては、現地ならびに国内の収束状況を慎重に判断した上で、現地での資料調査を実施する。
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Causes of Carryover |
世界的な新型コロナウィルスの感染拡大により、本年度に予定していたドイツ・カッセルでの現地調査が延期となったため、旅費が次年度使用額として生じている。ドイツならびに日本国内で感染が収束し次第、現地調査の早期実施を予定している。
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