2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K00235
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
藤野 一夫 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (20219033)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 文化芸術による地域再生 / アートとツーリズム / 国際芸術祭 / アーティスト・イン・レジデンス / 文化政策 / アートマネジメント / グラスヒュッテ / マルクノイキルヘン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、文化政策・文化経済の分野において、少子高齢化対策としての地域創生を展開している先進的な取組みを、①行政主導で行なっている事例、②NPOなど民間・市民主導で行なっている事例、③行政と民間・市民活動が連携して推進している事例に分けて調査・検討する。④上記の各事例をドイツにおける先進的取組みと比較・考察し、現実的な課題を解明する。平成30年度は、具体的には以下の2点に沿って計画的に研究を遂行した。 1)グローバル化する現代においては、国境を超えた開放的な精神が、中規模都市や地方中核都市にとっての死活問題となっている。たとえば、国際芸術祭やアーティスト・イン・レジデンスのような時限的なアートプロジェクトを通して、地域の交流人口が活発化している事例として、8月に越後妻有で開催させた「大地の芸術祭」のフィールドワークを実施した。また城崎国際アートセンターにおけるアーティスト・イン・レジデンス事業の視察を行なった。 1)美的かつ知的な刺激から生まれたイノヴェーションを、定常的な地域創生に結びつける仕掛けづくり、すなわち文化と産業との持続可能な関係づくりが第二の課題となる。地域経済への刺激を引き起こし、それによって中小都市や地域コミュニティの自律的で持続的な創生に寄与するためには、どのような文化政策や文化産業への支援が必要とされているか。その成功事例と課題を日独比較調査によって考察するために、ドイツで注目させている2つの地方都市、時計産業の街グラスヒュッテと楽器産業の街マルクノイキルヘンのフィールドワークを6月に実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、具体的には以下の2点に沿って計画的に研究を遂行した。 1)国際芸術祭やアーティスト・イン・レジデンスのような時限的なアートプロジェクトを通して、地域の交流人口が活発化している事例として、8月に越後妻有で開催させた「大地の芸術祭」のフィールドワークを実施した。また城崎国際アートセンターにおけるアーティスト・イン・レジデンス事業の視察を行なった。そこでは開放的な精神を通じて地域に固有な資源と他の地域からの異質な資源とが交わり、多様な化学反応が生まれることが分かった。また地域・市民プライドの醸成がコミュニティ再生に寄与し、地域活性化の起爆剤になっていることも検証できた。 2)美的かつ知的な刺激から生まれたイノヴェーションを、定常的な地域創生に結びつける仕掛けづくりである。文化と産業との持続可能な関係づくりが第二の課題となる。地域経済への刺激を引き起こし、それによって中小都市や地域コミュニティの自律的で持続的な創生に寄与するためには、どのような文化政策や文化産業への支援が必要とされているか。その成功事例と課題を日独比較調査によって考察するために、ドイツで注目させている2つの地方都市のフィールドワークを6月に実施した。ザクセン州にあって、旧東ドイツ時代の崩壊以降、急速に衰退した時計産業の街グラスヒュッテは、その150年にわたる精緻な職人技術の粋を再結集し、高級ブランディングに成功。経済的に輝かしい都市再生を実現し、文化面でも時計博物館をも新設し、ドレスデンからの日帰り観光のメッカとなっている。また同州の辺境にある楽器製造の街マルクノイキルヘンでは、国際音楽コンクールを開催することで、グローバル化の中での知名度と国際競争力の強化に成功している。ただし、こちらは観光と結びついた地域再生にまでは至っていない。これらの点について、同市長や文化政策担当職員と討議を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度に実施した日独でのフィールドワークの成果を踏まえ、本年度は豊岡を中心とする但馬地域と、その比較において但馬地域の文化環境と文化政策について、さらに参与観察を継続する。また、アートによる地域再生、とりわけフェスティバルとツーリズムを結びつけて効果をあげている都市・地域について、ローカルとグローバルの観点から調査し、その要件を多角的に分析する。
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Causes of Carryover |
本年度の調査費を確保するために、昨年度の使用を抑制した。
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