2019 Fiscal Year Research-status Report
Interpretation of performance for Minao Shibata's Theater piece -On physical and spatial production-
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18K00237
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
徳永 崇 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (90326497)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 柴田南雄 / シアター・ピース / 現代音楽 / 合唱 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、研究の一部を海外で発表した他、いくつかの合唱団体に柴田南雄のシアター・ピース作品の演奏を依頼し、その演出方法の具体について記録を集めた。また、実演に困難を伴う作品については、ワークショップを開催して、技術習得のノウハウを蓄積した。 まず、2019年4月18日に、フィンランドのヘルシンキ大学において、柴田南雄のシアター・ピースの特徴について発表した。 続いて5月18日に、柴田作品の第一人者であるテノール歌手・森信夫氏を招聘し、東北地方の「門付け芸」をモチーフとした作品《萬歳流し》のワークショップを開催した。この作品は、「門付け芸」の継承者の不在により、再演に大きな困難を伴うが、初演時から本作品に出演する機会の多い森氏からの技術指導により、今後の再演のためのノウハウが蓄積できた。 6月8日には、広島を活動拠点とする合唱団「ある」に依頼し、《念佛踊》を再演した。本作品は、衣装や照明、小道具など、楽譜には明記されていないものの、演出のための配慮が求められる他、「双盤」という大型の鉦が用いられることから、再演に多くの困難を伴う。本公演では、柴田の自宅から「双盤」を借用した他、小道具をオリジナルで制作するなど、「ある」ならではの再現の工夫が見られた。演出の詳細について論文にまとめ、「増山賢治先生退官記念論文集」に寄稿した。 9月30日には、先述の森氏とテノール歌手の西久保孝弘氏に依頼し、《萬歳流し》再演のための練習用音源として「門付け芸」の実演を録音した。「門付け芸」の継承者がいない現在、この音源は本作品の再演において貴重な資源となり得る。 また、2020年1月26日には、合唱団「零」に依頼し、《歌垣》を実演し、演出方法を記録した。この作品は、演出の必要な箇所と、身振りを伴わない箇所が混在しており、そのバランスなどに工夫を要する。今回は本合唱団のオリジナルの演出を記録した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、当初予定していた4回の実演検証の内、3回を実行した。残る1回については、出演者の日程の都合により、次年度へと移行したが、既に準備に取り掛かっており、コロナウイルスによる活動自粛が解除されたら、実行に移すことが可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年3月より深刻化したコロナウイルス感染拡大に伴い、現在、演奏による実地検証が困難な状況となっている。2020年度には、3回の公演を企画していたが、既に6月に予定していた公演1回分が中止となった。その他の公演についても先行きが不透明である。このため、夏以降の公演が中止になった場合、研究の延長申請により、次年度にスライドさせることも検討している。これについては、各演奏団体とも綿密にコンタクトを取っており、適宜対処ができるよう準備を進めている。 延長申請が受理された場合、2021年11月末には公演実施による演出の記録データが出揃う。7月から既にデータの揃っている公演について文書化を開始し、12月から1月までに出版物としてまとめる。
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Causes of Carryover |
演奏による検証作業を依頼した合唱団との日程調整の都合、次年度に演奏を移行せざるを得なくなったため、未使用の金額が発生した。該当分については2020年11月に演奏を行う予定。なお、次年度の請求分は、残りの演奏企画の実施、及び研究成果の発表(書籍化)に充てる。
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Remarks |
フィンランドのヘルシンキ大学で開催されたセミナーのホームページ。日本音楽の諸層について、フィンランド人と日本人の研究者が集い、発表を行った。
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