2021 Fiscal Year Annual Research Report
Interpretation of performance for Minao Shibata's Theater piece -On physical and spatial production-
Project/Area Number |
18K00237
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
徳永 崇 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (90326497)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 柴田南雄 / シアター・ピース / 演出 / 合唱 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、柴田南雄のシアター・ピース作品の演出方法について初演者の聞き取り調査や楽譜の分析を行った上で、合唱団に実演を依頼し、その実態について検証した上で、記録に残すことを目的としている。本来ならば2020年度が最終年度にあたり、3団体によって3演目を実演し検証する予定であったが、新型コロナウィルス感染拡大によって、演奏会の実施が困難となったため、本年度(2021年度)へと延期せざるを得なくなった。しかし、新型コロナウィルスは様々な変異を繰り返し、2021年度も猛威を振ったことから、当初の計画通りの演奏会実施は困難であると判断し、かろうじて実施できた1演目の実施を最後に、成果報告をまとめることとした。なお、柴田南雄のシアター・ピースの上演に際しては、ステージ上のみならず、観客スペース内の通路を奏者が移動しつ歌唱することから、コロナ禍においては実演が非常に難しい演目である。しかし、2021年7月31日に実施した「追分節考」の実演では、移動専用のスペースとしてバルコニー席やステージ・バック席を活用し、観客との距離を適切に保つ工夫を凝らす等、新型コロナウィルスの感染防止対策を踏まえた新しい演出の可能性を開拓したという点で、従来にない取り組みとなった。その方法を含め、演出の詳細を記録できたことは、今後の「ウィズ・コロナ」の社会における柴田のシアター・ピース実演の指針となり得る大きな成果の一つであった。柴田のシアター・ピース作品は、人々が出合い、心を通わせ、そして時に衝突しながら、一つのコミュニティを形成する中で関係性を深めることが重要な演目である。このことから、新型コロナウィルスの感染拡大による人々の交流の分断は、その根幹を揺るがす大きな問題であった。そのような社会状況の中でも人々がつながり、音楽文化で交流できる空間を創出できる可能性を示したことは、今後のシアター・ピース再演の指針となり得ると考える。
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