2020 Fiscal Year Research-status Report
A Study on Musical Style in the Late Heian Period and Its Restoration: Based on the Zither Score Jinchi-Yoroku and the Biwa Score Sango-Yoroku
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18K00240
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Research Institution | Kyoto City University of Arts |
Principal Investigator |
田鍬 智志 京都市立芸術大学, 日本伝統音楽研究センター, 准教授 (40351449)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 仁智要録 / 三五要録 / 音源化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度より、藤原師長撰の箏譜『仁智要録』・琵琶譜『三五要録』全曲の録音に取り組んでいる。2020年度、三五要録の諸写本には含まれないが奥書に「三五要録巻第十三」とある『風俗譜』(宮内庁書陵部蔵)をあらたに録音リストに加えた結果、総トラック数は766トラック(2021年5月17日現在の総数)となった。このうち、2021年五5月17日までに、催馬楽全207トラック、唐楽全342トラック、風俗曲全22トラックほか、計580トラックの録音を終えた。 仁智・三五は、当時の他家・他者撰の楽譜集や、過去の時代の楽譜と照合し、相違する箇所を、傍注・脚注のかたちで記している。本研究では、そういった他の譜も個別に録音している(録音トラックが膨大な数となったのもそのためである)。仁智・三五に注記されている他譜の研究はこれまでになされてきたが、それをすべて演奏し音源化することで、当時の流派・個人毎の演奏法・運指・音の修飾法の違いが明らかにすることができる。また、網羅的に音源化することで、当時の雅楽の音楽構造(旋律の作り方や転調など)も耳で理解できるようになる。ようやく催馬楽・唐楽曲・風俗歌をすべて録音し終えたことで、その実態が明らかになってきた。 録音・整音を終えた音源の一部は、オンライン講座やCDつき論文集(2021年3月)のなかで紹介し、また、唐楽曲の録音を進めるにあたって問題となった只拍子・楽拍子のリズム解釈については、その論文集のなかで詳細にふれた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
仁智要録・三五要録収載の曲数は約200曲であるが、複楽章をもつ曲があり、複数の帖・段からなる曲もあり、また上記のように、同曲譜として楽拍子譜、他流の譜を併記されている場合があり、それらを別々のトラックとすると、全部で766トラックにもなる(この総数は今後多少変動する可能性がある)。現在、レコーディングを終えているのは、うち580トラック(5月17日現在)で、調子(チューニング用の楽曲)、高麗楽、秘曲(伎楽曲など)のほとんどはまだ未録音である。作業が遅れ気味となっている要因は、2020年度の後半、所属機関の業務としての共同研究が最終年度にあたり、その研究報告論文集(CD/DVDつき、2021年3月刊)の執筆・編集に時間を費やしたため、録音作業が全く進まなかったことと、新たに「風俗歌」の録音を追加し、結果録音トラック総数が増えたことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の成果物としては、冊子とCD集からなる「音の事典」といった体裁を予定している。冊子には、只拍子・楽拍子の解釈をはじめとする唐楽曲のリズム解釈、呂の催馬楽のリズム解釈、他家の譜(注記)との違い、奏法譜字の演奏解釈など、再現演奏にあたっての指針、そして事典形式の仁智・三五収録全楽曲解説、索引そして論攷を収める予定である。事典を作成するには、まず全音源の規模(総録音時間、何枚のCDに振り分けるか)を把握しトラック番号を確定させ、冊子の事典項目と対応させる必要がある。よってレコーディング作業を極力早期に完了させなければならない。レコ―ディング作業を2021年度前半には終えて、後半から事典編集に取りかかりたい。
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Causes of Carryover |
今年度(2020年度)後半は、私の録音作業が進まなかったため、録音データの整音作業委託費の支出が少なかったことによる。 録音作業を再開したので、整音委託費も今後支出がみこまれ、また仁智・三五の説明書き部分の翻刻作業委託費としても支出する計画である。
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