2021 Fiscal Year Research-status Report
A Study on Musical Style in the Late Heian Period and Its Restoration: Based on the Zither Score Jinchi-Yoroku and the Biwa Score Sango-Yoroku
Project/Area Number |
18K00240
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Research Institution | Kyoto City University of Arts |
Principal Investigator |
田鍬 智志 京都市立芸術大学, 日本伝統音楽研究センター, 准教授 (40351449)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 仁智要録 / 三五要録 / 音源化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度をもって、仁智要録・三五要録レコーディング作業すべてを終了した。トラック総数は818。うち、仁智調子曲44、三五調子曲70、催馬楽律曲88、催馬楽呂曲119、壱越調曲91、平調曲59、大食調曲55、雙調・黄鐘調曲65、盤渉調曲92、高麗曲84、仁智秘曲・伎楽曲29、三五風俗曲22。トータルタイムは27時間33分19秒となった。 当初の計画よりも大幅にトラック数が増えた。2020年度に三五要録の別本である「風俗曲」を加えたが、21年度は、当初予定していなかった仁智・三五それぞれ調子品に載る調絃法や、三五調子品に載る「琵琶旋宮法」をすべて演奏・録音した。また青海波の曲譜の解説文のなかに引用されているすべての譜例(垣代音取・唱歌の譜例で、源博雅説・明暹説などの譜例)もすべて録音した。 それらは、仁智・三五の主体となる曲譜ではないが、当時の音楽を知るうえで極めて重要である。調弦法では、完全5度や完全4度だけでなく短3度音程を正しくとることが要求されており、当時の人々が身に着けるべき音楽素養をしることができる。また18世紀ヨーロッパの五度圏の考え方に比肩する中国「旋宮」を体感するために藤原師長自身が考案(作曲)した「琵琶旋宮法」は、師長自身をはじめ当時の音楽家が受容していた中国音楽理論のレベルを知りうるものである。これらは、書かれた文字からその実態を理解することは難しい。音源化することで、感覚的に理解することが可能となった。 録音・整音を終えた膨大な音源からいくつかを、オンライン講座(12月9日 伝音セミナー)のなかで紹介した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績概要で述べたように、当初の計画には予定していない曲譜をも録音の対象にすることにしたために、録音作業に、より多くの時間を要したため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の成果物としては、冊子と音源(CDとするか他の記録媒体とするか未定)からなる「音の事典」といった体裁を予定している。冊子には、当時の調絃法、只拍子・楽拍子の解釈をはじめとする唐楽曲のリズム解釈、呂の催馬楽のリズム解釈、他家の譜(注記)との違い、奏法譜字の演奏解釈など、再現演奏にあたっての指針、そして事典形式の仁智・三五収録全楽曲解説、索引などを収める予定である。録音作業が終了したので、今年度は執筆・編集がおもな作業である。
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Causes of Carryover |
21年度は、録音作業が主でであったが、演奏協力者が必要な場合が多くはなく、また、作業自体はこれまでに購入した機材で賄えたため、経費がさほど高額にならなかったことが次年度使用額が生じた理由である。 22年度は、索引作りやイラスト作成、校正などを委託する人件費や、執筆編集のための必要機材(楽譜・図制作ソフト、モニター等)の購入に充てる予定である。
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