2018 Fiscal Year Research-status Report
伝統産業の需要分析:九州北部の伝統工芸品に関する計量経済学的アプローチ
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18K00249
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
黒木 宏一 九州産業大学, 経済学部, 講師 (00618150)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内山 敏典 九州産業大学, 経済学部, 教授 (10151903)
外園 智史 九州産業大学, 経済学部, 准教授 (40611570)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | LA/AIDSモデル / 香港市場 / 需要理論 / 支出弾力性 / 金額弾力性 / 数量弾力性 / 地域特殊要因 / 産業構造要因 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、九州北部地域の指定伝統工芸品のうち陶磁器産業に着目し、消費者のニーズの多様性に着目した分析を試み、当該産業における生産の維持拡大を志向する「新たな需要」の創出に資する新知見を得ることである。この目的を果たすため、本研究は(1)公統計の利用による需要分析、(2)アンケート調査による需要分析の、2つの方法で研究を進めている。 本年度の主な研究成果は、次のとおりである。①主要な日本産陶磁器輸出先である香港を事例に、LA/AIDSモデルによって需要構造の分析を行った。その結果、日本産陶磁器は他国産と代替関係は薄く、自己価格に対しても非弾力的であり、安定した需要が望めているものの、支出弾力性も低く、奢侈品としての認識も低い可能性が明らかとなった。②『家計調査年報』を用いて、ウォルド&ユレインの需要理論により陶磁器等耐久消費財の需要構造の計量分析をおこなった。その結果、金額弾力性が数量弾力性より大きいとの結果を得た。生産者は消費者需要構造を理解し、高付加価値の財を生産することが重要であることを示唆した。③『工業統計』の生産額データを用いて、福岡、佐賀両県における陶磁器産業のシフトシェア分析を行った。その結果、先行研究同様に、地域特殊要因による増減率が産業構造要因の増減率よりも概ね高く、地域特殊要因の影響が強いことが確認された。④アンケートによる需要分析を行うため、調査方法、調査機材の検討及び調査票の設計を行った。そのうえで、ウェブ調査を選択してアンケートを実施し、2018年8月までに1,000サンプルを取得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に示したとおり、2018年度は主に4つの成果を得ており、初年度から一定の成果を上げることができた。 現在の進捗状況は、交付申請書に記載した「研究の目的」「研究実施計画」に照らし、概ね計画通りに進んでいる。よって、本研究は「おおむね順調に進展している」と自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度の成果を踏まえ、交付申請書に記載の次年度の研究計画を、着実に遂行したい。具体的には、以下のような研究を進める。 (1)公統計の利用による需要分析 成果①について学会発表の際に指摘された部分等を改善し、2019年度中にとりまとめ、学会誌等で発表したい。他の消費地においても同様に代替関係や各種弾力性その他、需要構造を明らかにし、日本産陶磁器の輸出、販売の可能性について検討する予定である。2019年度は、特に日本国内での需要構造についても検討を加えていく。 (2)アンケート調査による需要分析 成果④のアンケートにより得た調査データによる、数量化理論等の計量分析を行う予定である。その際、成果②及び成果③の成果を関連付けて考察を試みたい。
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Causes of Carryover |
購入予定だった解析に用いるパソコンの購入費が少なく済んだほか、調査研究旅費や研究補助員人件費等が不要となり、支出を抑えることができたため。
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Research Products
(3 results)