2018 Fiscal Year Research-status Report
"Autonomy" of savants in the 18th century : what we know from the financial records of the Royal Academy of Science in Paris
Project/Area Number |
18K00255
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
隠岐 さや香 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (60536879)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 自律 / 科学アカデミー / 学問の自由 / エロージュ / ラヴォワジエ / コンドルセ / 財務会計記録 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は18世紀フランスにおける科学研究への投資の実態とその思想史的背景について、パリ王立科学アカデミーの財務会計記録資料を中心に調査することである。 平成30年度前半は既に手元にあるラヴォワジエの財務関係公刊資料を中心に分析を行い、革命期の科学アカデミーにおける財務状況と学者の役割観について中間報告として6月に経済学史学会のYoung Scholars Seminars 2018で口頭発表を行った。ラヴォワジエが学者(savant)の受け取る報酬の性質とその役割の「自由」さを結びつけて論じていることが、科学者の専門職業化を論じる上で重要であることを確認した。 秋と冬に渡仏して科学アカデミー文書館、国立学士院図書館、コレージュ・ド・フランス文書館、国立公文書館で文献資料調査を行った。先行研究からは確認出来ない1761年から1784年までの財務会計記録の再構成を試みたが、科学アカデミー文書館の調査では情報の欠損を埋められなかった。ただし、国立公文書館における財務会計文書資料群F4シリーズに関する調査が予想以上に進展した。理由は、カタログが不備で全体像を把握するのすら困難と考えられていた同資料群のカタログが改訂され、本研究に関連しそうな資料群のあたりもつけることができたことにある。 並行して、研究課題16H01907で先鞭を付けていた論文に、本科研の調査内容を加えたフランス語論文を18世紀研究にとって重要なDix-Huitieme siecle誌に投稿し、受理された。同論文では、既に行ってあった科学アカデミー会員が死去した際に書かれる追悼記事の分析と、本科研の課題である学者の「自律」への考察を総合した。結果、学者の研究の自由としての「自律」のみならず、社会的な課題に対し特定の利害関心に基づかず行動する専門集団としての「自律」が18世紀末にいかに論じられていたかがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
専門的な助言を得て、当初は二年目(2019年度)に予定していた国立公文書館資料群Fシリーズの調査を本格的に始めることができた。また、やはり助言により、王政期の「学者」像を理解する上で、革命期を生き延びた王立コレージュ(後のコレージュ・ド・フランス)の重要性を理解し、視野を広げることが出来た。この二点は次年度以降の調査の進展に生きてくるはずである。 それとは別に、フランス語での投稿論文を初年度に仕上げることができたのは当初の目標になかったことで、進展が早いと言える。 また、本科研の本来の課題ではないが、アカデミー組織と学者の「自律」という観点からの分析を日本の19世紀の事例に活かした口頭発表を国際会議で行うことができた。実験的な試みであったが、次の研究課題につながる広い視野を獲得できた。本年8月に星海新書から一般向けの著書を出版した際にも本科研で得た知見を活かすことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
7月にエディンバラで開催される国際18世紀学会にて成果発表を行う予定である。そのあと、内容を英語あるいはフランス語の研究論文として投稿するための準備を行う。前年度の調査で年金支払い記録簿からアカデミー会員の立場、収入を把握することを試みたので、その内容をまとめることが中心となる予定である。また、革命期における科学アカデミー財産目録関連資料も入手したので、その分析を進める。秋以降に、関連史料が完全に散逸してしまっている1699年から1758年の財務会計記録調査を行う。国立公文書館F4シリーズの分類状況については予想以上に把握出来たので、F17やO1、Gシリーズなども視野に入れながら調査を進める。年度末には資料整理を行う。
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