2019 Fiscal Year Research-status Report
"Autonomy" of savants in the 18th century : what we know from the financial records of the Royal Academy of Science in Paris
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18K00255
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
隠岐 さや香 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (60536879)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | パリ王立科学アカデミー / 財務会計資料 / ビュフォン / 学者の自律 / エロージュ / コンドルセ / フォントネル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は18世紀フランスにおける科学研究への投資の実態とその思想史的背景について、パリ王立科学アカデミーの財務会計記録資料を中心に調査することである。 令和元年度前半には、昨年度投稿した学者の「自律」問題に関して科学アカデミーのelogeを分析した論文がDix-huitieme siecle誌に掲載された。同論文の内容は研究課題16H01907により先鞭を付けた上に、本科研の調査内容を加えたものであった。7月には前年度の調査をもとにエディンバラで開催される国際18世紀学会にて成果発表を行った。 1月には本科研プロジェクトの企画として「王立アカデミー史研究会」を開催し、科学アカデミーの摂政時代の財務状況について研究を進めている若手研究者、小風綾乃氏(お茶の水大学大学院)と美術アカデミーに詳しい栗田秀法氏(名古屋大学)を招聘して専門的知見の共有を行った。小風氏からの情報提供で1699年から1758 年の財務会計記録調査について概要が把握出来た。 3月にはフランスのパリで文献調査を行い、それまで死角となっていた国立図書館の手書き文書群の中に散逸した科学アカデミーの財務関係資料を発見することができた。また、モンペリエ大学のジャン=ピエール・シャンドレール氏とオンラインで打ち合わせを行い、科学アカデミーと碑文・文芸アカデミーの比較について助言を得た。ただし、この滞在中に新型コロナウィルス感染症が同国内で拡大し、調査旅行日程の半分のところで研究調査のため必要な図書館、文書館へのアクセスが断たれてしまった。そのため、予定されていた調査の一部が行えなかった。また、本年度中に投稿論文を用意する予定であったが、帰国後はコロナウィルス関連の対応に忙殺され、十分に進まなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
7月に国際18世紀学会で成果の一部を発表出来たこと、とりわけその中でこれまで誰もあきらかにしてこなかった学者達の私財を投じての科学研究活動への情熱の一端を明らかに出来たことは前進であった。また、昨年度投稿された論文が査読の後の微修正を経て無事にDix-huitiemeに掲載されたことも一つの成果であった。 本科研プロジェクトにもとづく研究会を開催し、国内で最もこの主題に通じた研究者をあつめて研究交流を行えたことも重要な成果である。 文献調査については、国立図書館に重要な文書を見つけたこと、ならびに科学アカデミー文書館に立ち戻り、そこで革命期の財務会計資料の詳細を確認出来たことが成果として上げられる。 ただし、新型コロナウィルスにともなう現地情勢の変化で、当初予定していた調査が行えなかった。また、帰国後の混乱とオンライン授業準備など生じた環境変化の中で、投稿論文が用意できなかった。それゆえ、やや遅れているとの判断となった。
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Strategy for Future Research Activity |
年度の前半は、前年度の国際会議発表、ならびに3月までの史料調査にもとづき、英語あるいはフランス語で投稿論文をまとめることに専念する。また、並行して、18世紀末のフランスにおける財務会計のあり方を一次、二次資料で確認した上で、ラヴォワジエの財務会計記録の分析を進める。当時の会計方法は現代の感覚ではつかめない部分があり、歴史的な検証作業を必要とする。必要に応じて経済史研究者などの識者に助言を求める。 並行して、資料整理と研究支援アルバイトを雇用し、論文執筆に必要となるマニュスクリプトの書き起こしおよび注釈作業等を進める。 年度後半は渡仏により、成果の発表と共有を試みる。先日、パリ1ソルボンヌ大学の研究者で学術機関の財務会計について造詣の深い研究者2名と連絡を取り、同大学のセミナー企画に応募書類を送った。結果は7月に判明するが、それがうまくいけば来年の3月にフランスで公開セミナーを行う。上手くいかない場合、あるいは新型コロナウィルスにより海外渡航が容易でない場合は、状況に応じて国内外で発表の機会を探す。
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