2020 Fiscal Year Research-status Report
"Autonomy" of savants in the 18th century : what we know from the financial records of the Royal Academy of Science in Paris
Project/Area Number |
18K00255
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
隠岐 さや香 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (60536879)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | パリ王立科学アカデミー / 財務会計資料 / コンドルセ / ビュフォン / 学者の自律 / 学問の自由 / フォントネル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は18世紀フランスにおける科学研究への投資の実態とその思想史的背景について、パリ王立科学アカデミーの財務会計記録資料を中心に調査するこ とである。 令和二年度は研究補助者も雇用しつつ、これまで調査した史料の解読と整理を行った。パリ王立科学アカデミー財務会計資料は非常に散逸が激しく、年度ごとの支出や予算総額を知るだけでも複数の文書館の史料を突き合わせることが必要であることがわかった。また、財政史において王政期というのは一般的に「パトロネージから官僚制へ」などと要約されるが、それは王侯貴族が気に入った存在に報奨金を与えるという私と公の切れ目がなかった状態が、近代的な職業的・専門的組織における金銭のやり取りへと制度化されていく過程にあたる。科学アカデミーの財政においても同様の特徴が窺えることがわかった。これらの成果を取りまとめ、2020年11月にはフランス語による国際研究集会での発表を行った。現在はその内容をフランス語の論文にまとめているところである。この他、一般向けの新書で終身書記コンドルセの評伝を執筆したが、その中で本研究の成果を一部使用した。また、やはり一般向けの公開講演や媒体において学問の「自律」「自由」に関連する文書を発表し、本研究プロジェクトの内容を一部使用した。2021年3月に本研究成果を用いた公開セミナーと講義のため、フランスのパリ第一大学(パンテオン・ソルボンヌ)から招聘されていたが、コロナ禍により延期となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
年度内にフランス語で研究発表内容をまとめることができたのは大きな進展であった。とりわけ、識者と交流したことで、散逸著しい財務会計史料の現状そのものが歴史的考察の対象にたるということが確認出来て、視野が開けた。 前年度にあたる2020年3月の史料収集調査が滞在先におけるロックダウンで中断され、予定していた調査が終わっていない。今年度のうちに機会を見つけて渡航する予定であったが果たせなかった。現在、遠隔での文書取り寄せなどを試みているが、遅れている。 2021年3月に予定していたパリ第一大学への招聘であるが、一部の旅費を本研究プロジェクトで負担する予定であった。一年旅程が延期されたため、旅費を新年度に繰り越しとした。 この他、また、コロナ禍により学務が忙しくなり、研究の進展に遅れがあった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在執筆中のフランス語研究論文を完成させる。また、ラヴォワジエの財務会計記録の理解に識者の知見が必要であるので、引き続き助言を募る。2022年3月に延期されたフランスでの公開セミナーの実現のため準備する。また、国際研究集会での成果発表を目指す。
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Causes of Carryover |
2021年3月に予定されていたフランス滞在がコロナ禍により延期となったこと、ならびにコロナ禍で生じた学務等の負担により研究の遅れがあったため。次年度使用額は基本的に渡仏の旅費とする。また、資料整理の残りを処理する過程で必要となった消耗品(文房具など)の購入のため使用する予定である。
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Research Products
(3 results)