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2018 Fiscal Year Research-status Report

ガリレオの「新しい自然学」に関する総合的歴史研究

Research Project

Project/Area Number 18K00256
Research InstitutionKyoto University

Principal Investigator

伊藤 和行  京都大学, 文学研究科, 教授 (60273421)

Project Period (FY) 2018-04-01 – 2021-03-31
Keywordsガリレオ / 17世紀科学革命 / 天体観測 / 望遠鏡 / ハリオット / 『太陽黒点論』 / 『世界系対話』 / 『星界の報告』
Outline of Annual Research Achievements

今年度は,第一に,望遠鏡による太陽黒点観測についての手稿および『太陽黒点論』の検討を行い,それを通じてガリレオの天体観測と宇宙論的主張の関連を考察した.とくに同時期に太陽黒点を観測していたトマス・ハリオットの残した観測記録との比較を通じて,ガリレオの天体観測の特質を考察した.ハリオットの観測記録が現象の記述に終始するものだったのに対し,ガリレオの観測記録は黒点の位置や本性の洞察,太陽の自転といった実在宇宙に関わる問題と密接に繋がっており,実在宇宙に関する主張に彼の観測の特質があることが明らかになった.このテーマについては,口頭発表「ハリオットとガリレオ―太陽黒点観測をめぐって」を行い,英文研究ノート”Harriot and Galileo: On sunspot observations”として研究成果を公表した.
第二に,『世界系対話』,とくに第一日における,月表面,太陽黒点,彗星などに関する議論を,初期・中期の著作(『星界の報告』,『太陽黒点論』,『偽金鑑識官』など)における議論と比較検討し,天体観測から得られた知見と宇宙論的な主張の関係,その発展を検討した.『世界系対話』における月表面等の議論は,初期・中期の著作の議論に基づいているが,一方では議論における観点の違いも指摘でき,そこには天体観測による知見の蓄積,そして彼の宇宙論の発展を読み取ることができる.このテーマについて研究をまとめているところであり,口頭発表「ガリレオ『世界系対話』と望遠鏡による天体観測」(日本科学史学年会,2019年5月)を行うとともに,2019年度に論文にまとめて成果を公表する予定である.

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

今年度は,研究実績の概要で述べたように,第一に,天文学および宇宙論に関する初期の著作における彼の天体観測と伝統的な宇宙論批判との関連を考察した.とくに太陽黒点についてハリオットの観測記録との比較検討を行い,ガリレオの研究の特質を洞察した.これまでの研究を通じて,初期の段階におけるガリレオの天体観測および宇宙論に関する基本的な理解を得ることができたと考え,中期・後期の著作へと研究を進めている.『世界系対話』,とくに第一日における天体観測に関わる部分の記述を,初期・中期の著作における記述と比較検討し,それを通じてガリレオの宇宙論の発展について考察している.
今年度の天体観測と宇宙論に関わるテキストの検討においても,第二年度以降の研究に備え,運動論や自然研究の方法に言及しているテキストを随時確認し検討することを合わせて行っている.『世界系対話』が対話篇として書かれているように,哲学書のような体系的な記述をガリレオは行っていないため,テキストの中に散見される様々な言説から彼の思想を再構成せねばならなく,テキスト全体についての目配りが肝要である.とくに第二年度の研究対象である,運動論と宇宙論との関わりをめぐるテキスト部分に関しては,第二年度への研究の進行をスムーズに行うために,天体観測に関わるテキストと同時に先行して読解を進めており,これによって第二年度への研究の進行をスムーズに行うことができると考えている.

Strategy for Future Research Activity

第二年度は,当初の計画通り,宇宙論との関わりにおいて運動論を考察する.とく天体の運動における運動法則の扱いについて,『太陽黒点論』および『世界系対話』を中心に考察を行う予定である.『太陽黒点論』では,いわゆるガリレオの「円慣性」の法則が初めて提示されており,そこで彼の新しい運動論の出発点を確認する.『世界系対話』に関しては,第一に,地球の運動がもたらす自然学的な問題に対して,運動の相対性の議論に代表されるような新しい運動論をガリレオがどのようにして構築したのを検討する.第二に,『世界系対話』において,慣性法則,落下法則,運動の合成などの運動法則が,宇宙論の議論とどのような関係の中で論じられていたのかを考察する.
最終年度である第三年度は,前年度までの宇宙論および運動論に関する考察を踏まえ,両領域を統一的に捉えるような自然研究の方法をガリレオのテキストの具体的な検討を通じて考察する.第一に,初期の著作(『星界の報告』・『太陽黒点論』)および中期の著作(『偽金鑑識官』)における自然研究の方法に関わる議論を検討する.とくに検討していなかった中期の「クリスティーナ大公妃宛書簡」における,自然研究と聖書研究の関係および自然研究の認識論的位置づけに関する議論を考察する.第二に,晩年の著作(『世界系対話』・『新科学論議』)における「新しい自然学」の方法に関する議論を検討し,初期・中期の著作における議論と比較し,彼の自然研究の方法の発展を解明する.これらを通じて,ガリレオの「新しい科学」の基盤となっていた方法論の総合的な像を構築することを目指す.

Causes of Carryover

購入予定をしていた資料(外国語図書)の刊行が遅れたため,次年度に購入することとなった.

  • Research Products

    (2 results)

All 2019 2018

All Journal Article (1 results) (of which Open Access: 1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] Harriot and Galileo: On sunspot observations2019

    • Author(s)
      Kazuyuki Ito
    • Journal Title

      科学哲学科学史研究(PHS Studies)

      Volume: 13 Pages: 43-52

    • DOI

      10.14989/240987

    • Open Access
  • [Presentation] ハリオットとガリレオ―太陽黒点観測をめぐって2018

    • Author(s)
      伊藤和行
    • Organizer
      日本科学史学会年会

URL: 

Published: 2019-12-27  

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