2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K00259
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
白井 智子 神戸大学, 国際文化学研究科, 協力研究員 (30341001)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | お雇い外国人 / お雇いフランス人 / 日仏交流 / 技術移転 / 明治 / 日本の近代化 / フランス人技師 / 生野銀山 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、明治新政府が、日本の殖産興業・近代化を図るために、明治元年から14年間、生野鉱山寮に雇用したフランス人鉱山技師ジャン=フランソワ・コワニェを始めとする総勢24名のフランス人技師らについて研究するものである。本研究の目的は、既存研究にない「生野お雇いフランス人らの経歴と活動」、「同フランス人らが見た明治初期の日本および当時の日本人や他機関のお雇いフランス人との交流」、「同フランス人らによる明治初期の日本への西洋技術や学問の導入課程とその評価」、「同フランス人らを通してフランスの各種学会に与えた日本の影響」について史実を詳細に調査・検証し、彼らの業績を正確に顕彰することによって、明治初期のフランス人ら技師による技術移転ならびに日本の近代化を考察・解明することである。 本年度は、「コワニェほか23名のフランス人の全貌」をテーマに、コワニェらの出身地であるフランス・リヨンとサン=テティエンヌや生野鉱山があった朝来市、多くの関連資料が残る東京、横浜、神戸、パリの資料館・図書館・公文書館において、フランス人らの関連資料の発掘調査を行った。フランスでは、一部のフランス人の母校であるサン=テティエンヌ鉱山学校で、同校の教員らの協力を得て調査を行った他、リヨン他ゆかりの地において関係者へのインタビュー調査・面談、関連地の発掘も行った。 その結果、一部のフランス人の戸籍関連資料、在学中の成績、同窓会による記録資料、フランス人あるいはその家族のゆかりの地(墓石、フランス人の名が付けられた通り・地下鉄の駅など)を発掘することができた。これにより、一部のフランス人の生年没年月日、生い立ち、学生時代、家族、来日までの動静などが明らかになった。 本調査結果により、フランス人らの日仏両国における業績・与えた影響を考察するための貴重な基礎資料・情報を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の調査により、24名の生野鉱山寮お雇いフランス人技師のうち、重要なポストに就いていた数名のフランス人らに関して貴重な新資料・情報を入手することができた。しかし、それ以外のフランス人については、出身地・出身校、来日経緯について調査を試みたが資料を見付けることができず、未だ不明である。また、予定していた、中心人物のジャン=フランソワ・コワニェの最初の勤務地であった鹿児島(薩摩藩に雇用されて来日)での調査を行うことができなかった。 次年度は、「フランス人技師が見た明治日本と人々との交流」について調査・研究する予定であるが、本研究に並行して、今年度解明できなかった点について引き続き調査したいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、「フランス人技師が見た明治日本と人々との交流」をテーマに、フランス人ゆかりの地、或いは生野銀山でフランス人らと関わった日本人のゆかりの地において、フランス人による報告文、家族や友人に宛てた手記、関わった日本人らの記録の発掘を試み、収集した資料を時系列に整理・分析する。それにより、フランス人の目から見た明治初期の日本の印象、お雇いフランス人らの日本の生活の様子について考察・解明する。 令和2年度は、「お雇いフランス人が1870年代のフランスに与えた日本の影響」をテーマに、フランス人技師らの所属学会やフランス国立図書館などにおいて、技師らがフランスにおける日本学や鉱山学、地理学、植物学、医学などの学会誌や専門誌に投稿した論文・報告文を発掘・調査する。それにより、彼らが日本で行った各種研究とその研究によってフランスの学界や諸分野に与えた日本の影響を明らかにする。 令和3年度は、「お雇いフランス人が明治初期の日本にもたらした近代化と技術移転」をテーマに、コワニェが日本滞在中に視察・指導を行った日本国内鉱山関連地において、フランス人らが日本国内鉱山にもたらした西洋技術、日本人に伝授した西洋の学問や文化、日本に残した歴史遺産について調査・検証する。それにより、明治初期のお雇いフランス人らが日本の近代化に与えた影響について明らかにする。
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Causes of Carryover |
予定していた鹿児島での調査を実施することができず、また、情報公開のために開設予定であったホームページが未開設のため、鹿児島行きの旅費とホームページ開設費用分が次年度へ繰り越すこととなった。 次年度は、予定している、フランスと日本(下関、豊岡、横須賀、富岡など)での調査に加え、本年度に実現できなかった鹿児島での調査とホームページ開設を行いたいと考える。
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