2018 Fiscal Year Research-status Report
西欧近代医学教育カリキュラムの背景思想と理念について:書誌調査と分析
Project/Area Number |
18K00265
|
Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
澤井 直 順天堂大学, 医学部, 助教 (40407268)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 医学書誌目録 / 医学学習指南書 / 初期近代の西欧医学教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、初期近代の医学学習に関する書籍出版の概要を把握するために、1750年までに出版された15点のラテン語医学書誌目録の調査を行なった。 16世紀以降多数の医学書が出版され、また出版された医学書の情報を集積した書誌目録も継続的に多くの著者によってまとめられていた。多くの目録は著者をアルファベット順に並べ、著者ごとに書籍のタイトルや出版年などの情報を記し、その記載内容や扱う主題を記していた。少数の医学書誌目録は主題別に書籍を分類していた。 1750年までに出版された主題別医学書誌目録4冊(Israek Soach, Nomenclator scriptorum medicorum(1591), Jan Antonides van der Linden, De scriptis medicis(1637), Martin Lipen, Bibliotheca realis medica(1679), Christoph Wilhelm Kestner, Bibliotheca medica(1746))において、医学学習に関する書籍がどのように扱われているかを調べたところ、最初の3冊では医学学習に関する書籍が「学習」「学習法」「読書の順序」という項目に分かれて記載され、残るKestnerではすべて「医学の方法書」という項目で50冊弱が記載されていた。 上記の結果から、初期近代において医学学習に関する書籍は単発で書かれたものではなく、一つの書籍ジャンルとして出版されていたことが示唆された。Kestnerが「医学の方法書」として列挙した書籍で言及される書籍を確認したところ、先行する「医学の方法書」に対する言及も多く、また複数の著者による「医学の方法書」が合冊出版されたことも確認できた。 以上により初期近代ではこれらの医学学習指南書が一ジャンルを形成していたという理解が得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では2019年度末までに初期近代の「医学学習指南書」の書誌目録を作成することが目標としていた。2018年度末までには、既存の医学書誌目録のなかで「医学学習指南書」に関する書誌情報を確認し、その情報を総合した書誌目録の作成の準備を予定していた。 まず、20世紀以降の医学書誌目録を確認したところ、初期近代の「医学学習指南書」の記載は少なく、独立した分類項目としては扱われていないことが判明した。そこで研究対象の書籍と同時代の医学書誌目録に注目し、いくつかの書誌目録では複数の「医学学習指南書」を少数の項目に記載していることが明らかになり、「医学学習指南書」を見つけるのに有用であることを見出すことができた。 2018年度は1750年までの医学書誌目録を確認したが、そこに記載された「医学学習指南書」についての情報をまとめて、書誌目録を作成する見通しが立った。また、2019年度は2018年度に行なったのと同様の調査を1750年以降の医学書誌目録にも行ない、「医学学習指南書」出版状況の全容を把握する。 そのうえで2019年度末には当初の計画どおり、「医学学習指南書」の書誌目録を作成できる見込みであり、おおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
2019年度は2018年度に行なったのと同様の調査を1750年以降の医学書誌目録にも行ない、「医学学習指南書」出版状況の全容を把握し、2019年度末には当初の計画どおり、「医学学習指南書」の書誌目録を作成する。 2020年度以降に、作成した「医学学習指南書」の書誌目録内の各「医学学習指南書」の分析を行なうことを計画している。そのため、2019年度からは書誌目録の完成に並行して、各「医学学習指南書」を入手していく。入手すべき書籍は数100点になる可能性があり、入手にあたっては、デジタルデータが取得できるものはそれを活用する。デジタルデータが入手不可能な場合にはマイクロフィルム等を取り寄せ、費用を押さえる。 入手した書籍はその記載内容を分析するが、そのデータベースを作成して「医学学習指南書」の概要や全体的な特徴等を見通すことが可能なようにする予定である。そのため、2019年度はデータベース構築に必要なツールの準備を進め、また構築に必要な技術の取得の準備もすすめる。 2020年度末に上記のデータベースの構築を終え、2021年度はデータベースを使いながら、初期近代の医学カリキュラム策定の背景思想・理念の分析を行ないたい。
|
Causes of Carryover |
作成中の論文の英文校正の支出を予定していたが、年度内に完成しなかったためにその分が次年度使用額となった。 また、入手を予定して予約した書籍が年度内に出版されなかったためにその分も次年度使用額となっている。
|