2018 Fiscal Year Research-status Report
山東京伝の吉原文化圏に関する研究-柳沢米翁の俳諧交友と大名の茶道交流の解明
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18K00273
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鹿島 美里 北海道大学, 文学研究科, 専門研究員 (00609068)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 山東京伝 / 柳沢米翁 / 江戸座俳諧 / 茶道 / 松平不昧 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、山東京伝の作品を解読する鍵となる吉原文化圏を明らかにすることを目的としている。山東京伝の文化圏に影響を与えた吉原文化が、大名子弟をパトロンとする江戸座俳諧と、その俳諧交友をもとにした茶道による大名と吉原者の交流であることから、山東京伝と深い繋がりを持った大名俳人柳沢米翁の俳諧交友活動を米翁の日記から調査し、大名の俳諧交友関係を江戸座俳諧との係わりの中で明らかにする。そして山東京伝のパトロン、松平雪川の兄松江藩主松平治郷(不昧)や姫路藩主酒井忠以(宗雅)ら大名の茶道具や、山東京伝の作品や吉原に係わる人々の所持した茶道具の調査・分析を行うことによって、京伝との係わりを解明していく。今年度は柳沢米翁の『宴遊日記』、『松鶴日記』、『美濃守日記』、息子の柳沢信復の『聞書』、『聞書番外』の調査・分析を行った。また今年は松平不昧没後二百年にあたり開催された「大名茶人松平不昧」展において、不昧が収集した茶道具の目録『雲州蔵帳』等に記載された書画・茶道具を実見し、不昧所持の茶道具と戯作の関係性について接点を発見することができた。このうち不昧お好み道具を製作していた蒔絵師羊遊斎は、姫路藩主酒井忠以弟酒井抱一の下絵をもとに蒔絵の制作をしており、大田南畝ら戯作者との係わりも持っていた。ここからも茶道での大名子弟と戯作界との一つの係わりを見出すことができた。これら松平不昧ら大名と茶道の係わりについて、『雲州蔵帳』、『古今名物類聚』、『遠州蔵帳図鑑』、『万宝全書』、『大正名器鑑』等の資料から分析を行い、京伝の吉原文化圏との係わりの一部について考察した。次年度以降も引き続き大名ら所持の茶道具と資料の分析を行い、山東京伝との係わりを解明してゆく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
柳沢米翁の『宴遊日記』、『松鶴日記』、『美濃守日記』等の調査を行い、米翁と大名俳人、江戸座俳諧宗匠の交友関係の一部を調査・分析・データ化し、資料の翻刻・読解を行った。加えて江戸座俳諧の位置づけを明確にしていくため『東風流』の翻刻を行い、江戸座俳諧宗匠存義と春来の句風への考察を行った。さらに今年度は大名茶人松平不昧没後二百年祭にあたり、三井記念美術館、絲原記念館、手錢記念館等で行われた企画展から大名所持の茶道具と戯作との係わりを見出すことができた。加えて山東京伝のパトロンの一人であった松前藩主弟松前文京と関連して、蝦夷地探検家の松浦武四郎生誕二百年にあたり、武四郎から照射した松前藩や北海道に係わる大名や文人との文化交流についても考察を加えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
山東京伝と係わりの深い同時代の大名俳人柳沢米翁の俳諧交友関係の解明を引き続き行う。柳沢米翁の日記を中心に、マイクロフィルム、原資料にあたり資料調査を行ってゆく。米翁の俳諧関係の日記『宴遊日記』、『松鶴日記』、『美濃守日記』、加えて息子の柳沢信復の『聞書』、『聞書番外』から資料の翻刻・読解を行い、米翁の俳諧活動をまとめていく。そして、米翁の俳諧交友を江戸座俳諧、大名俳人との係わりの中で解明してゆく。加えて俳諧交友をもとにした大名子弟の茶の湯での交際を松江藩主松平不昧の『雲州蔵帳』、『古今名物類聚』、酒井抱一の兄酒井忠以(宗雅・銀鵞)の『逾好日記』、『玄武日記』等と山東京伝の係わりについても調査を進めてゆく予定である。
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Causes of Carryover |
関西方面への書誌調査・資料調査を予定していたが、日程の都合で赴くことができず、次年度の出張調査にあてることとした。
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Research Products
(1 results)