2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K00284
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
大島 明秀 熊本県立大学, 文学部, 准教授 (50508786)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 和本 / 写本 / 漢籍 / 蘭書 / 書誌 / 蔵書印 / 肥後 / 熊本 |
Outline of Annual Research Achievements |
後藤是山記念館に関しては、スペースが狭く書誌採録に係る作業が困難であること、学芸員(嘱託)が常駐しないことで調査日の調整とスムーズな出納が困難であることなどから年度中3回の調査にとどまった。また、仮目録作成に従事しつつ書庫を見たところ、近世の和本と近代以降の和装活字本が混在し、また、写本と文書もまた混在していることが判明した。よって当初の方針を変え、まずはこれらを適切に分けてから、和本もしくは写本の目録を採録することとした。1000冊程度存在すると見られる写本に関して、歴代の学芸員などが作成してきた簡易目録を発見し、アルバイトを用いてこれの入力を進めるとともに、各書籍の背景調査に取り掛かっている。 次に、熊本大学附属図書館菅野文庫の蘭書29冊については、仮目録の入力を行っている段階である。詳細な書誌調査や蔵書者菅野是正の人物究明については、図書館の開館を待って行う。 リニューアルオープンした熊本博物館が所蔵する和本については、調査先で熊本地震の際に種々のコレクションが四散したことが判明した。館の提供体制の問題もあり、学芸員と相談した結果、昭和50年代に熊本市に在住した村田三郎医師から寄贈された貴重古医書に狙いを定めることとし、過去の受け入れ帳をもとに簡易目録作成に取り組んでいる。受け入れ帳と現物を突き合わせる中で、本コレクションについても四散していることが明らかになったが、大部分は再発見することができた。 なお、3月に研究会で後藤是山記念館蔵和本について研究発表の予定であったが、中止となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
後藤是山記念館での調査を進める中で、資料混在の問題は生じたが、一方で、写本資料に関しては簡易目録が存在することが判明し、これの入力によって概ねの全体像を掴む作業を進めることができている。 菅野文庫の蘭書については、昨年度の時点で概ねの蔵書の全体像は把握したものの、図書館の閉館につきさらなる調査ができなかったため、簡易目録の点検と、背景追求に方向を切り替えた。 熊本博物館の蔵書については、村田三郎医師旧蔵コレクションに狙いをつけ、簡易目録作成に取り組みだした。 また、調査先の閉館・閉室が相次ぎ、予定していた複数回の調査が中止となり、現時点では各資料所蔵先における目録調査が困難な見通しで今後も調査を継続できるか不明であるため、簡易目録の入力とそれに基づく書誌の背景調査、加えて、これまでに撮影した画像資料をもとに資料翻刻や研究を進める方針に変えるところである。
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Strategy for Future Research Activity |
後藤是山記念館、菅野文庫(熊本大学附属図書館)、熊本博物館は、現時点でいずれも閉館・閉室の状況である。これらの開館・開室を待って書誌調査を継続するが、ただし、いずれも閲覧室は「三密」状況なので閲覧体制には工夫が必要である。 開館・開室が果たされるまでは、入力可能な簡易目録の作成・点検と書誌の背景調査に力を注ぐ。また、既に撮影した画像資料に基づいて、後藤是山記念館や熊本博物館蔵の貴重医学書などに狙いを定め、翻刻などの研究発表を進めていく。 また、蘭書に関しては、オランダや東京での調査は不可能と考え、簡易目録の作成と、可能な限りの背景調査につとめる。
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