2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K00286
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Research Institution | Seitoku University |
Principal Investigator |
松本 麻子 聖徳大学, 文学部, 教授 (70708990)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 日本中世文学 / 連歌 / 紹巴 / 発句 / 昌叱 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、連歌師里村紹巴の出座した連歌百韻および千句を整理し、紹巴の文芸活動について明らかにしようとするものである。紹巴は生涯600近い連歌会に出席したとされる室町を代表する連歌師であるが、現在は180程度の百韻・千句しか紹介されていない。本研究は4年間で、①現存する紹巴の参加した連歌の資料を年代順に整理し、②紹介されていない重要な百韻は翻刻し、③紹巴と会席を共にした連衆の一覧を作成すること、を目指す。続けて①~③の基礎調査をもとに、紹巴の連歌表現の特色を明確にし、室町末から近世初頭にかけて紹巴を取り巻く人々との文芸交流の様相を知ることを、目的とする。 今年度は、前年度に引き続き国立公文書館内閣文庫の『百韻連歌集』について伝本調査を行った。『百韻連歌集』は、38の連歌百韻を集め書写した書である。これらの百韻は、宗養・紹巴時代の連歌を中心としたもので、特に紹巴の参加した百韻は未翻刻のものが多い。そこで、紹巴の出座した百韻を翻刻し、「国立公文書館内閣文庫蔵『百韻連歌集』の翻刻と解説(三)」(「医療創生大学研究紀要」第1号〈通算第34号〉、2021年2月)として発表した。これで、『百韻連歌集』の翻刻が完結したことになる。また、今年度は連歌発句に関する研究も実施した。紹巴が永禄10年(1567)富士一見のために駿河まで旅をした記録『紹巴富士見道記』に注目し、連歌の発句が後の俳諧における地発句(付句を想定していない独立した発句)のような形式となった背景を探った。紹巴以降の連歌について調査し、本研究の最終目的にあたる「近世初頭にかけて紹巴を取り巻く人々との文芸交流の様相を知る」の一端を明らかにしたものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
国文学研究資料館・国立公文書館・国会図書館にて、紹巴の連歌資料について引き続きマイクロフィルムの有無を確かめ、複数の本が存在するものは諸本調査を行った。上記に記したように、永禄6年(1563)以降の重要な百韻の翻刻を行った。ここまでは、計画通りに実施できている。しかし、今年度も前年度と同様、予定していた数日間を要する調査、具体的には、大阪天満宮文庫や天理図書館を中心とした連歌懐紙の調査(書誌調査と写真撮影)に関しては、新型コロナウィルスの影響で実施できなかった。各所蔵機関・図書館が閉鎖されていたこと、そして調査可能な時期が緊急事態宣言になり、出張ができなくなってしまったことによる。いずれも、次年度に積み残す結果となった。特に、大阪天満宮文庫の連歌懐紙については、国文学研究資料館にマイクロフィルムもないものが多く、進捗に影響が出ている。次年度の後半には、できうる限り原本調査を実施し、最終年度の報告書を完成させたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度の予定は、次のようである。今年度にできなかった大阪天満宮文庫や天理大学図書館にある連歌資料の基礎調査(書誌調査と写真撮影)を実施し、重要な百韻を翻刻する。早稲田大学図書館蔵伊地知文庫の連歌資料の翻刻も合わせて行う。最終年度は、紹巴に関わる連歌資料を概観できるようにすることを目標とする。前述したように、新型コロナウィルスの影響が懸念されるため、大規模な調査は実施できない可能性を考慮しつつ研究を進めて参りたい。具体的には、各調査機関から写真版を取り寄せ、紹巴百韻の伝本調査をWeb上で確認できるものに限定し、他には、国文学研究資料館のマイクロフィルムからの紙焼き写真をもとに実施したい。そして、後半の計画としていた、武家と連歌会で詠まれた句を分析し、紹巴たちの連歌表現についての考察を進め、学会が開催されるのであれば学会発表を、難しい場合は発表をせずに論文にまとめたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由については、新型コロナウィルスの影響により、出張がまったくできなかったことにある。夏期休業中と3月に予定していた大阪天満宮文庫・天理大学の調査などに行くことが叶わなかった。こちらの旅費には180000円程度を予定していた。また、天理大学では資料の複写代として80000円程度の使用額を予定していた。次年度、各機関の調査が可能になれば着実に実施して参りたい。
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Research Products
(2 results)