2020 Fiscal Year Research-status Report
Studies on Writers' International Interactions and Representations of Asia on the Basis of Sato Haruo's Previously possessed Materials
Project/Area Number |
18K00289
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Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
河野 龍也 実践女子大学, 文学部, 教授 (20511827)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 近代文学 / 国文学 / 植民地 / 草稿研究 / 国際情報交換 / 佐藤春夫 / 台湾 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、当初の計画通り、台南の台湾文学館における展示企画「百年の旅びと:佐藤春夫1920台湾旅行文学展」(百年之遇:佐藤春夫1920臺灣旅行文學展)に本研究課題の成果を活用した。展示に関する具体的な業務では、全体構成と展示品説明、翻訳等を担当した。展示期間は当初、2020年4月3日から11月29日までの予定であったが、好評のため2021年2月28日まで延長した。しかし、延長後も防疫上の渡航規制が解除されず、会期中一度も参観することはできなかった。また、国際交流行事がすべて中止され、研究者の連携や関係者への新規取材を進めることができなかった。ただし、この展示によって佐藤春夫の台湾での知名度が飛躍的に向上し、今後の研究連携や情報集約の基礎固めができた意義は大きい。また、資料写真と説明文を使って、台湾文学館がデジタルミュージアムを構築し、会期終了後もホームページで公開を継続している。これには日本語版・中国語版があり、日本からもアクセスできる。展示に合わせて図録を兼ねた論文集を台湾で出版し、その編集と執筆も担当した。 そのほか、佐藤春夫の台湾旅行関連作品を9編集めた『佐藤春夫台湾小説集 女誡扇綺譚』(中公文庫)を編集し、解説を執筆した。春夫の「台湾もの」が文庫版になるのは、1936年の単行本『霧社』(昭森社)出版以来これが初めてである。また解説には、特定された作品の舞台に関する情報や、旅行日程に関する従来説の再検討など、本研究および本研究にいたる過程で明らかすることができた最新の成果を反映させ、一般的な作家紹介・作品紹介にとどまらない内容を盛り込めた。 論文は春夫の「台湾もの」の一つ「鷹爪花」のモデルと虚構化の手法に関するもの1点、春夫の台湾観に「故郷の喪失」のテーマを指摘したもの1点(前記論文集所収)、『南方紀行』に関する論考を再構成して中国語訳したもの1点を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、台湾文学館の展示を通じて研究成果を公表でき、年度の柱となる目標は達成することができた。しかし、海外渡航・入国規制のため、この展示に関連する交流行事が中止された。そのため研究者・関係者のネットワーク構築に若干支障が生じ、オンラインでの業務連携など部分的な実現にとどまった。また、防疫対策として対面での聞き取り調査を控える必要があった。その影響で、佐藤春夫の中国紀行・台湾紀行に関する国内外の関係者遺族への取材が十分にできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もコロナ禍の影響を考え、聞き取り調査ができなかった場合に備える必要がある。そこで佐藤春夫旧蔵資料の新規撮影を進め、将来的に継続して分析が進められるよう準備しておく。また、これまでに採取した資料データを整理し、データベースを充実させながら、段階的に論文執筆・報告書作成を行う計画である。
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Remarks |
台湾文学館のホームページの一部。展示企画に本研究成果を活用。展示品説明を執筆した。日本語版・中国語版がある。
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Research Products
(7 results)