2021 Fiscal Year Research-status Report
Studies on Writers' International Interactions and Representations of Asia on the Basis of Sato Haruo's Previously possessed Materials
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18K00289
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Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
河野 龍也 実践女子大学, 文学部, 教授 (20511827)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 近代文学 / 日本文学 / 植民地 / 日記 / 国際情報交換 / 福建省 / 台湾 / 紀行文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度もまた、コロナウイルス流行の影響により、国内の移動や海外渡航ができず、佐藤春夫のアジア紀行に関するフィールドワークを予定どおりに進めることができなかった。そこで、これまでの研究の蓄積を広く発信することに意を注いだ。 昨年度、春夫の台湾渡航100年にあたり、2016年以来台湾文学館に提案していた記念展を実現させることができた。交流行事が中止された影響で、展覧会は日本でほとんど話題にならなかったが、台湾関連作を集めた文庫版『女誡扇綺譚』を編集することができた。この出版は、中公文庫に入った初の春夫の著作であり、しかも紀行を主としているため、日本文学だけでなくアジア史や台湾に関心のある読者から強く支持された。好評を受け、今年度は春夫の中国大陸での旅行と文人交流に関する文集『星/南方紀行』を姉妹編として出版することができた。1920年の福建旅行と、1927年の上海・杭州・南京旅行から生まれた紀行文学の成果、および魯迅の翻訳紹介や中国近代文学者との交流は、春夫の忘れられた功績として大きな意味を持つ。特に福建旅行に関する解説では、本研究で集めた現地資料を十分に活用した。また、文学者交流に関する解説では、田漢・郁達夫の日記や伝記を参照し、新しい知見を取り入れることができた。 論文はこれまでの調査結果の整理が主であった。『南方紀行』の渡航先と作中作の典拠に関する新発見を論じた1点、佐藤家資料の分析の一環として、春夫日記の翻刻1点、また、春夫兄弟の日記のカラー影印版制作に取り組み、それらの意義を分析した解説1点を発表することができた。さらに、既発表の文章1点が中国の研究者によって取り上げられ、福建省の歴史研究誌に翻訳紹介された。 そのほか、台湾中央研究院のオンラインシンポジウムで発表1件、日中国際研究チームのオンラインシンポジウムで発表1件を行い、貴重な意見交換の機会となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度も、前年度に引き続き、海外渡航・入国規制が解除されなかった。そのため研究者・関係者のネットワーク構築を新たに進めることができなかった。一方、聞取り調査のための訪問も、防疫の観点から控えなくてはならず、そのため、佐藤春夫の中国紀行・台湾紀行に関する国内外の関係者遺族に取材することができなかった。ただし、オンラインでの研究者連携は、シンポジウム参加の機会を活かして昨年よりも収穫があった。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は佐藤春夫生誕130周年にあたる。ご遺族から借用し、実践女子大学文芸資料研究所で調査を進めていた佐藤春夫資料を一般公開する展示企画の開催が決定している。新宮市立佐藤春夫記念館と緊密に連携しながら企画を進めていく予定である。また、作家生前の事跡にまつわる歴史的証言の採集は、すでにかなり時間との勝負になりつつある。コロナ禍による遅滞は思わぬ損失だった。これ以上機会を逸しないように関係者との連絡を再開し、準備を進めたい。
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Research Products
(9 results)