2022 Fiscal Year Annual Research Report
Studies on Writers' International Interactions and Representations of Asia on the Basis of Sato Haruo's Previously possessed Materials
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18K00289
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河野 龍也 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (20511827)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 近代文学 / 日本文学 / 植民地 / 草稿研究 / 国際情報交換 / 紀行文学 / 台湾 / 福建省 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は佐藤春夫生誕130年にあたる年であった。調査協力機関である実践女子大学を会場とし、2022年9月26日から10月15日まで、「知られざる佐藤春夫の軌跡―不滅の光芒―」展(実践女子大学文芸資料研究所・公益財団法人佐藤春夫記念会共催、実践女子大学香雪記念資料館協力)を開催した。展示品114点のうち約半数は新資料もしくは初公開の資料であり、なかでも新発見の春夫宛芥川龍之介書簡(1926年11月9日)、春夫「同時代私議」草稿(1912年10月22日)、春夫宛太宰治書簡(1936年10月7日)はNHKニュース及び新聞報道に取り上げられ、話題となった。資料の分析から判明した新たな春夫文学の全体像を提示し、展示品をオールカラーの図版として添えた書籍『知られざる佐藤春夫の軌跡―秘蔵資料を読む』(武蔵野書院 2022年)を刊行できたことは、本研究の成果発信として意義深い。 ほかに論文形式では、研究状況の総括的な報告と資料紹介を行った。前者には、台湾における佐藤春夫展の取り組みを国内学会誌に記録として報告したもの、および海外におけるフィールドワークの文学研究上の意義を解説した紀要報告が含まれる。後者には、上記展覧会の関連行事として10月8日に開催された公開講座のうち、佐藤春夫遺族へのインタビューの記録、および春夫の父豊太郎が春夫ほか家族に宛てた1913年から1917年にいたる書簡の翻刻と解題が含まれる。特に書簡は、本研究において先行公開した春夫兄弟の日記と時期的に重なるものであり、従来不明な点の多かった春夫20代前半の文学修行時代の生活実態を明らかにした成果として、伝記研究上の意義は小さくない。 コロナ禍の余波で相変わらず海外での研究は遂行できなかったが、厦門大学との共同研究として論文成果の中国語訳を進め、南京理工大学ではビデオ講座を行うなど、研究交流・海外発信に努めた。
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Research Products
(6 results)