2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K00298
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
徳竹 由明 中京大学, 文学部, 教授 (30387609)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 対馬藩 / 対外戦争 / 高麗襲来 / 蒙古襲来 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019(令和元)年度は、科研費によって対馬市教育委員会で「藤氏文書」の調査を2回、また長崎歴史文化博物館で「山口文庫」の調査を1回実施した。また研究遂行上必要な対馬関連の研究書を4冊、古典籍を1点(6冊揃)購入した。 その成果をも踏まえて、伝承文学研究会令和元年度大会(2019年9月・於長野県立大学)で「対馬に於ける康応元年度の高麗襲来言説を巡って」という題目にて研究発表を行った。この発表は、『高麗史』『東国通鑑』等朝鮮王朝時代に編纂された史書にその概要が記載されている康応元年度の高麗軍による対馬襲撃事件について、まず管見の限り対馬や日本に同時代史料が皆無であることを確認した。その上で近世期の対馬藩では、大枠を『高麗史』や『東国通鑑』に拠りつつ、細部はいつの時代の伝承かもわからないようなものをも利用しつつ、中世期の対馬人たちが活躍して高麗軍を敗退させたというような新たな歴史言説を紡ぎだしていること、またその言説生成の背景には、対馬が長年盾となって日本を守ってきたとする、近世期の対馬藩内で構築された「朝鮮押さえ役」の意識が働いているであろうことを確認した。 2019(令和元)年の年度末は、前年度に行った研究発表を基に論文「対馬に於ける蒙古襲来周辺言説」を執筆し、ほぼ完成させた。近世期の対馬藩で、文永の役の前・弘安の役の後・及び両戦役の間に関する言説が、海外又は島外の文献を用いて大枠が構成され、細部はやはりいつの時代の伝承かもわからないようなものも利用しつつ対馬人が蒙古を相手に活躍した形で紡ぎあげられた様相を明らかにしたものである。現在は投稿先を探している段階である。 いずれも研究課題「対馬に於ける対外戦争関連言説の生成とその背景」に合致した研究であると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は順調に出張による文献調査を行い、研究発表も行った。しかし年度末(2月・3月)に長崎歴史文化博物館にもっと山口文庫内の文献の調査に行きたかったのだが、新型コロナウイルスの影響もあり、出張の回数を減らさざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスを巡る現状を鑑みるに、少なくとも春学期の間は出張による調査を自粛することになると思う。また当初二年程度の建て替えによる休館としていた長崎県立対馬歴史民俗資料館の再開が今年度の秋に延びた。長崎市・対馬市への出張による文献調査が主体の研究なので、正直に言って困り果てている。今年度が最終年度であるが、今までの文献調査の結果と関連する古典籍の購入、諸研究機関がホームページ上で公開している文献の画像等を利用してできる範囲で論文を執筆し、研究成果を公表するしかないかと考えている。
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Causes of Carryover |
2019年(令和元)年度に購入予定であったノートパソコンを、既存のパソコンのデータ容量がまだ十分残っていたため購入しなかったこと、年度末に出張に行く回数を減らさざるを得なかったことが要因である。 ノートパソコンの購入と、秋学期以降新型コロナウイルスをめぐる状況が好転していたら精力的に調査出張を実施することを計画したい。
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Research Products
(1 results)