2019 Fiscal Year Research-status Report
守覚法親王の蔵書から見る中国典籍文化の日本中世文化への影響に関する実証的研究
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18K00302
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
池田 昌広 京都産業大学, 外国語学部, 准教授 (70633288)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 往生要集外典抄 / 文選 / 三教勘注抄 / 平基親 / 藤原敦光 / 初学記 / 蒙求 |
Outline of Annual Research Achievements |
平基親『往生要集外典抄』の出典調査を昨年度に引き続き実施した。基親は『文選』李善注のみならず五臣注をも利用し、それらから諸漢籍を引用している。これら『文選』注の頻用はじつは院政期の学問動向と密接に関連している。このことを明らかにするため、藤原敦光の撰した『三教勘注抄』の出典調査をも実施した。その結果、敦光が『文選集注』を類書的に頻用していることが明白になった。基親が『文選集注』を利用した徴証は得られていないものの、『文選』注を類書的ないし辞書的に使用する方法が両者で共通する。おそらくこの一致は両者に限ったことではない。『文選』注の参照は、院政期の文選学の復興と密接に関わっていることが推知される。 さらに『三教勘注抄』が複数の類書を利用していることも明らかにした。とくに利用されたのは『初学記』である。これは敦光の架蔵本であった可能性がある。さらに『修文殿御覧』の利用も判明したが広範囲には参照されなかったようだ。架蔵していなかったなど参照しづらい学問的環境があったのかも知れない。『翰苑』『類林』なども利用されたことが判明した。ただ『初学記』についで頻用されたのは『蒙求』と推測される。当該書は通常、附注本で読まれるが、この注から敦光は多くの文章を孫引きしている。興味深いのは、かれが『蒙求』の旧注のみならず補注をも利用していることである。結論を言えば、敦光の手にした『蒙求』は、いわゆる準古注本と呼ばれる、多くの旧注に補注が組み込まれた本であったと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『往生要集外典抄』の出典については、なお未解明な部分が少なくない。ただ『三教勘注抄』と『往生要集外典抄』とにおける『文選』注の頻用を、院政期の文選学の復興という大きな学問動向の中に定置できたことは収穫と言える。また『三教勘注抄』の類書利用が明らかになったことは、守覚法親王の時代の書物世界にせまるため有用である。
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Strategy for Future Research Activity |
平安末期から鎌倉初期にいたる類書ならびに『文選』注の利用法について、いっそうの調査を実施する。その成果を参照しながら守覚法親王の書物世界にせまるため、顕昭『袖中抄』の出典調査を行う。
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