2020 Fiscal Year Research-status Report
守覚法親王の蔵書から見る中国典籍文化の日本中世文化への影響に関する実証的研究
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18K00302
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
池田 昌広 京都産業大学, 外国語学部, 准教授 (70633288)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 藤原敦光 / 三教勘注抄 / 秘蔵宝鑰鈔 / 初学記 / 蒙求 / 文選集注 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究成果】 ①単著「『三教勘注抄』と類書」(『京都産業大学論集 人文科学系列』第54号、2021年3月、352-331頁(逆頁)、査読有) ②単著「藤原敦光の文選学」(『京都産業大学日本文化研究所紀要』第26号、2021年3月、1-21頁、査読有) 【研究成果の解説】 日本中世に展開された学問の実際は古典への注釈である。加注にあたっては中国で制作された類書などの編纂物がおおいに利用された。その具体像を藤原敦光(1063~1144)の著作『三教勘注抄』『秘蔵宝鑰鈔』を例に復元した。前者は、空海『三教指帰』の、後者は同『秘蔵宝鑰』の各注釈書である。空海の漢文作品には漢籍に典拠する語が頻用されている。敦光の両注釈書はそれらの出典を大いに究明している。本年度は、敦光が加注のさいに頻用した書籍を調査した。上掲の①は両注釈書における類書なかんずく『初学記』30巻と『蒙求』旧注本との頻用が明らかにしたもの、②は『文選』注なかんずく『文選集注』の頻用を明らかにしたものである。これら敦光が加注にあたり頻用した漢籍は、当時の博士家の標準的な参考書と考えられるもので、当時の漢籍の舶載状況を知る手がかりになる。①②が考察対象としたのは、本研究の課題である院政末期の直前の時期に当たる。その漢籍の受容状況の如何は、守覚法親王の蔵書を考えるうえで多くの示唆を与える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の対象時期は院政末期であるが、その直前における漢籍の受容状況を大局的に確認することができた。ただ、前年度に計画していた書禁に関する研究はあまり進まなかった。コロナウィルスの感染拡大によって、調査活動を制限され膨大な関連史料の解読が十分出来なかったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
南宋から元代までの書禁に関する研究を進め、また『袖中抄』の引用漢籍に関する研究を完成させる予定である。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの感染拡大のため、本年度は十分な研究活動ができなかった。そのため補助事業期間の1年延長を計画し、延長期間の研究活動費用を捻出するため、本年度の予算執行を抑制的に行なった。翌年度(延長期間)においては、本研究を完結させるため、計画的に予算を執行するつもりである。
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Research Products
(2 results)